成績が大いに向上するものと期待されています。 JALSG参加施設をJALSGのホ-ムページhttp://miwa.hama-med.ac.jp/jalsg/で調べていただければ、条件の合う未治療の患者さんはイマチニブによる治療が受けられます。
急性前骨髄球性白血病にはレチノイン酸による分化誘導療法が著効を呈し、90%以上が完全寛解に到達します。分化誘導された白血病細胞は計画細胞死の機序により死滅し、約1ヵ月で正常血球が回復してきます。寛解後は他の急性骨髄性白血病と同様に併用化学療法による寛解後療法を行いますが、レチノイン酸と化学療法薬とは互いに交差耐性がありませんので、化学療法がよく効きます。そのため、完全寛解になった患者さんの 75%以上が治ることが期待されています。再発した場合でも、亜砒酸や新レチノイドであるトミバロンなどにより再寛解となる例が多く、その後、造血幹細胞移植療法などが行われるため、現在では急性前骨髄球性白血病患者さんの80%以上が治るようになってきました。
レチノイン酸は活性型ビタミンAですから、他の抗白血病薬のような強い毒性もなく、そのため感染症や血小板減少による出血などの合併症や患者さんに与える苦痛も少なく、結果として医療費も少なくなるという利点もあります。レチノイン酸が著効するのは、単にビタミンAだからと言うのではなく、白血病の原因のところで述べましたように、この白血病ではもともと細胞を成熟分化される働きを持つレチノイン酸受容体の遺伝子が異常になったために白血病が発生しているので、大量のレチノイン酸がこの異常となった遺伝子が作る分子に働いて白血病細胞を成熟分化させるのです。したがって、最初は分化誘導療法と呼ばれていましたが、最近では、異常分子に作用する分子標的療法と呼ばれるようになりました。分化誘導は結果に過ぎなかったのです。
私は白血病の治療を初めてまもなく40年になりますが、これまでは、治癒率の 上がる治療法や新薬は必ず医療費も高くなるという図式でしたが、この分子標 的療法は副作用が少ないために、極めて例外的に医療費が安くなる治療法です。今のところ、分子標的療法が効くのは、この型の白血病や慢性骨髄性白血病などに限られていますが、医学的にも医療経済面からも、今後是非、研究開発していかなければならない21世紀のがん治療法です。
骨髄移植療法
骨髄移植療法とは、致死量の抗がん剤を投与したり全身放射線照射を行うことにより白血病細胞を殺した後に、強力治療によって回復しなくなる骨髄中の造血細胞を、他人の骨髄を移植することにより、血球を回復させる治療法です。必要なのは骨髄中にあって血液細胞をつくる基になる造血幹細胞です。最近、この造血幹細胞が末梢血中や臍帯血の中にもあり、これらを用いる末梢血幹細胞移植や臍帯血幹細胞移植も骨髄移植と同じ程度に有効であることが判りましたので、最近では造血幹細胞移植療法(stem cell transplantation, SCT)と一括されるようになりました。造血幹細胞移植療法により薬物療法ではほとんど治癒の期待できない難反応例や再発症例においても治癒が期待できます。大量のサイクロフォスファミドやブサルファンなどの抗がん剤や全身放射線照射を始めとする移植前の前治療が、現存の抗白血病治療法の中で最も強力であるという事実に加え、移植片対白血病効果すなわち移植したドナーのリンパ球が患者さんの白血病細胞を免疫学的に攻撃するという効果があるためです。
単純に考えると大変結構な治療法なのですが、HLA 適合ドナー (家族ないしは非血縁者) がいることが第一条件です。また、移植前の治療が強力であることより、これに耐え得るよう全身状態が良好であり、年齢が50才以下の患者さんのみに施行できるという制限があります。HLA とはヒトの組織適合抗原のことで、両親から一つずつもらう組織型は4組の組み合わせが出来ますので、兄弟姉妹間で適合する確率は4分の1です。子供のすくない日本人ではなかなか適合ドナーを見つけることができません。そのため、骨髄バンクや臍帯血バンクが作られて、非血縁者ドナーによる移植も行われています。
HLAは最も主要な組織適合抗原型ですが、赤血球にAB型以外の血液型がたくさんあるように、組織適合抗原型も幾つかあり、それらの全てが合う訳ではありませんので、組織適合抗原型の違いによる免疫病が出てきます。すなわち、ドナーのリンパ球が患者組織を免疫学的に攻撃する移植片対宿主病(graft-versus-host disease, GVHD) です。非血縁者ドナー移植では、その差がより大きいため、GVHDがより強く出ます。
重症型のGVHDは致死的となりますので、この医原病は造血幹細胞移植療法において、解決しなければならない最も重大な問題です。この免疫反応をシクロスポリン(サンジュミン)やタクロリムス(プログラフ)などの免疫抑制薬で抑えることはできますが、これらの薬は正常の免疫反応も抑制しますので、今度は免疫不全症が現れて、間質性肺炎などの合併症が多くなってきたり、移植片対白血病効果も抑えられるために再発が起こりやすくなりますので、なかなか対応の難しい合併症です。
特に、非血縁者ドナー移植では、GVHDでの発生頻度も重症度も高くなり、GVHDで亡くなる患者さんもかなりの割合で出現します。最近では、HLAを単に血清学的に検査するだけではなく、DNAも調べることができるようになりました。DNAタイプも完全一致している場合のGVHDの発生頻度は家族ドナーと同じ程度になりますので、より安全に施行できます。幸い臍帯血幹細胞移植の場合は、例え非血縁者ドナーでも、このGVHDが軽症であると言われていますが、臍帯血中の造血幹細胞数が少ないため子供でしか行えません。家族間移植でも、長期的に見ると、移植関連合併症により約30%が死亡し、また白血病再発も約20% にみられます。ただし、移植直後の移植関連死は、最近の治療の進歩により大幅に減っており、移植そのものはかなり安全に行われるようになりました。
薬物療法の成績が向上してきたため、初回の寛解期から造血幹細胞移植療法、特に、非血縁者ドナー移植を行うか否かは議論のあるところです。欧米での大規模な前方向比較研究やJapan Adult Leukemia Study Group (JALSG)の前方向研究の結果は、成人の急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病においては、造血幹細胞移植療法により再発は少なくなりますが、全体の生存期間が明らかに良くなるというエビデンス(証拠)はあまりありません。移植で
きた患者さんの成績だけをみると良く見えるのですが、移植する前に再発するとか、たとえドナーがいても移植療法に耐えられないような全身状態にある患者さんもまとめて解析しま
すと、化学療法の成績とそれほど違わないという成績なのです。逆にみれば、早期再発した患者さんや全身状態の悪い患者さんを除外して解析すれば、化学療法の成績も良く見えるこ
とになるのです。しかし、予後不良因子を持った患者さんでは、JALSGの最近の成績も含め、造血幹細胞移植の方が良さそうであるという成績の方が多いため、年齢が若ければ移植
を行った方がよいと考えられています。ただし、ハッキリした予後不良因子を持った白血病の場合、例えばPh染色体陽性急性リンパ性白血病や骨髄異形成症候群由来の急性白血病は別
として、初回の寛解期にはGVHDが強く出る非血縁ドナー移植は行わない方がよいと思われます。完全寛解になった時に、自分の骨髄や末梢血中の幹細胞を保存しておき、強力治療後に
これを移植する自家造血幹細胞移植療法に関しても、明らかに良いというエビデンスはほとんどありません。
急性前骨髄球性白血病や小児急性リンパ性白血病では、分子標的療法や化学療法での長期予後が非常に良くなりましたので、造血幹細胞移植は初回の完全寛解期には行わず再発後しか
行いませんが、成人患者さんの場合、急性骨髄性白血病および急性リンパ性白血病では図3
ことが必要です。のようなフローチャートに沿って行っているのが一般的です。
本白血病の化学療法はシタラビン (ないしは BHAC)とイダルビシンやダウノルビシンを中心とした併用化学療法によって、まず完全寛解導入を目指します。現在の強力化学療法により70~80%が完全寛解に到達しますが、年齢が若いほど寛解率は高くなり、逆に高齢者では完全寛解率は低くなります。これは、一般的に高齢者は強力な化学療法に耐えられないためです。したがって、65歳以上の患者さんでは、治癒を目指すというよりも、病気をコントロールしてquality of life を優先する方法を選ぶことが多くなります。完全寛解になった後、これらの薬剤に加え、ミトザントロン、アクラルビシン(アクラシノン)、ビンクリスチンなどの寛解導入に用いた薬とは交差耐性のない薬剤を併用して地固め療法を3コース、さらに、維持?強化療法を6コース約1年施行します。最近ではAra-C 大量療法が地固め療法期に使われるようになりました。米国の比較研究の結果では、Ara-C 大量療法は骨髄移植療法と同じ程度の効果を示すことが報告されています。ただし、副作用は強く、治療関連死もみられますので、注意が必要です。完全寛解になった成人急性骨髄性白血病の内、50 歳未満の患者の約50%近くが治るようになっていますが、50歳以上となると治癒率かなり低くなります(図2)。本白血病の化学療法は副腎皮質ホルモン、ビンクリスチン、ダウノルビシン、シクロフォスファミド、アスパラギナーゼを中心とする併用療法により完全寛解導入を目指します。小児急性リンパ性白血病の95%、成人急性リンパ性白血病の70-80%が完全寛解に到達します。その後、メソトレキセート脊髄腔内注射や頭蓋放射線照射による中枢神経白血病予防を
小児白血病
行います。そして、導入療法と同じ薬剤やこれらとは交差耐性のない薬剤を併用して地固め療法を3コース行い、さらに6メルカプトプリンとメソトレキセートを中心とする維持療法を
小児白血病
約 2年間行います。小児では標準リスク群の80%以上、高リスク群の60%以上を治癒できるようになりましたが、成人では化学療法に難反応性のフィラデルフィア(Ph)染色体陽性白血病
小児白血病
が多いこともあって、完全寛解例の30%程度にしか治癒が得られません。ただし、年齢30歳未満、初診時の白血球数30,000/μL 未満でPh染色体を持たない予後良好群では50%以上が治
小児白血病
癒可能です。成人のPh染色体陽性急性リンパ性白血病は造血幹細胞移植療法を行っても治癒させることは困難です。
小児白血病
しかし、ごく最近、後で慢性骨髄性白血病の所で述べますが、 Ph染色体陽性白血病の原因となっている異常融合遺伝子bcr/ablが作るチロシン?キナーゼ活性を特異的に阻害するイマ
小児白血病
チニブが開発されました。しかし残念ながら日本では2004年現在、急性リンパ性白血病には保険適用がなく使用する訳には行きませんが、現在10施設で治験が実施されていますし、Ja
小児白血病
pan Adult Leukemia Study Group (JALSG)では、厚生労働省科学研究費補助金(効果的医療技術の確立推進臨床研究事業)の援助を受けて初発のPh染色体陽性急性リンパ性白血病を対
小児白血病
象に、他の薬との併用による多施設共同研究をしています。治療成績は予想どおり良好であり、かつては極めて難治性であったPh染色体陽性急性リンパ性白血病の治療
2008年4月10日星期四
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