胃がんは最近減少傾向にありますが、依然上位を占めています。粘膜に発生して壁を深部へあるいは横へ広がります。
① 罹患率と死亡率
胃がんの年齢調整罹患率は男性では人口10万に対して83.2、女性は31.6で男性第1位、女性第2位です。(2000年)
粗死亡率は男性では人口10万に対して53.3、女性では27.4で男性第2位、女性第1位です。2004年)
② 生存率
胃がんに対して肉眼的に完全に取りきれた定型手術がなされた場合の5年生存率は後に述べる病期のIA期のがんで、93.4%、IB期のがんで87.0%です。
病期が進むにつれて生存率が悪くなりますので早期発見早期治療が重要となります。(日本胃癌学会)
3.症 状
食思不振、悪心、嘔吐、上腹部不快感、腹痛、全身倦怠感、腫瘤触知などがあります。
4.検査と診断
① 胃X腺検査(バリウム検査)
食事制限の後、バリウムを飲み少し空気を入れることにより胃を膨らまし、胃の壁(粘膜)の表面にバリウムが薄く覆うようにします。
この状態でX線写真をとります。腫瘍の存在部位と大きさを決定します。
② 胃内視鏡検査(胃カメラ)
胃がんの確定診断のために必須で、正確な位置や大きさなどがわかります。
多くの場合、同時に組織が採取され良性?悪性の診断(生検病理組織診断)がなされます。
③ 腫瘍マーカー
他のがんほど有用なマーカーはありませんが、CEA?CA19-9が参考となります。
④ CT、MRI、超音波検査、PET検査など
胃癌に関しては原発巣での進みぐあいと肝臓や肺、腹膜、骨盤内の転移?再発を調べるために用いられます。
⑤ 生検病理組織診断
腫瘍組織の一部を採取して顕微鏡的に良?悪性を決定します。胃内視鏡検査時に採取されることが多くこれにより確定診断が行われることになります。
5.広がり(病期)
腫瘍の壁浸潤の深さ(T因子)、リンパ節転移の有無(N因子)、遠隔転移の有無(M因子)により規定され、この臨床病期に応じて治療法が変わってきます。
① T: 腫瘍の壁浸潤の深さ(粘膜からの深さで分類されます)
(ア)
T1:腫瘍が粘膜あるいは粘膜下。
(イ)
T2:腫瘍が固有筋層(T2a)か漿膜下層にとどまるもの。
(ウ)
T3:腫瘍が漿膜に接している腹腔に露出しているもの。
エ)
T4:腫瘍が直接他臓器におよぶもの。
胃がんをより良く治すために
2001年3月に日本胃癌学会が「胃がん治療ガイドライン」を作成し、現時点で最も妥当と考えられ推奨される治療法とその適応がまとめられました。当科では、原則的にこの「胃がん治療ガイドライン」に沿った治療を行っています。
近年の傾向として、早期胃がんが増加する一方、依然として高度進行胃がんや再発胃がんも少なくなく、従来の定型手術だけでは対応しきれない場合も増加しています。
がん治療は治ることが第一の目標ですが、同様に治るのであれば損なう可能性のある機能や後遺症は少ない方が望ましいと考え、「胃がんをより良く治すために」バランスの良い治療を目指しています。
胃がんの一般的なお話
胃に関する簡単な解剖と機能
胃の入口を噴門、出口を幽門といいます。
噴門は胃内容の食道への逆流を防止する働きをし、幽門は胃内容の十二指腸への流れが速くならないよう制御し、また十二指腸からの消化液の逆流を防止します。胃の手術では、胃が小さくなるか、時にはすべてなくなることと、これら噴門や幽門の働きが失われることが問題です。
そこでこれらの働きを失わないような手術(機能温存手術)が工夫されているのです。
胃は噴門がある上部、その間の中部、幽門がある下部の3つの部分に分けられます。胃は全体が「みぞおち」のあたりにあると勘違いされることが多いですが、実際、上部は左上腹部の背中側に位置し、下部が「みぞおち」のあたりで、幽門(胃の出口)は「みぞおち」の少し右にあります。
胃壁は5層構造です。
内側(内腔)から粘膜[最内層]-- 粘膜下層 -- 筋層 -- 漿膜下層(しょうまくかそう) --漿膜[最外層]の順になっています(右図を参照して下さい)。
胃がんの発生
胃がんは胃壁の最内層である粘膜から発生し、数年かかって5mm程度の診断できる大きさになると言われています。胃炎後の腸上皮化生、ピロリ菌(ヘリコバクター?ピロリ)感染後の慢性萎縮性胃炎など慢性炎症をおこす全ての要因が胃がんの原因になります。
生活習慣との関係では、塩分の多い食事、肉や魚のこげ、喫煙などがリスクを高め、ビタミンC、カロチノイドなどを含む野菜や果物がリスクを低下することがわかっています。
胃がんの症状
無症状のまま偶然検診で発見される場合から、食後にもたれる、食事がつかえる、体重が減るなど様々です。
胃の中央付近のがんではかなり進行しても症状がない場合がある一方、小さながんでも潰瘍形成により痛みや出血などが出現することもあります。
実際には、早期胃がんの約半数の患者さんは何らかの症状があって検査を受け、診断がついています。
診断のための検査とその目的
1. 胃内視鏡検査:
がんの存在、その位置(局在)、肉眼型を含む進行度の診断に不可欠です。細胞を採取(生検)することで組織学的な診断が確定できます。胃壁のどの深さまで進行しているかを調べるために、超音波内視鏡検査を施行することもあります。
2. 胃十二指腸造影検査:
バリウムと発泡剤を飲みレントゲン写真をとる検査です。胃全体の中でのがんの位置(局在)を知る上で重要で、内視鏡ではわからない胃壁の進展性も評価できます。このため内視鏡で胃がんが発見された後の精密検査として重要です。
3. その他:
この他、手術前には転移や他臓器への進展を調べるために超音波検査、CT検査、注腸検査が必要となることがあります。
胃がんの広がり方
1. 壁進達度:
粘膜に発生したがんは、胃壁に広がって行きます。
2. 転移:
リンパ節転移/胃壁からリンパ管を経由して胃壁の外のリンパ節に転移します。
血行性転移/胃壁から静脈を経由して胃以外の臓器(肝臓、肺、脳などに転移します。 腹膜播種性転移/漿膜浸潤し胃壁の外に達したがんは、腹腔にばらまかれた状態になります。
胃がんの分類(胃がんの深さによる)
早期胃がん:
がんの進展が粘膜または粘膜下層にとどまっているもの
進行胃がん:
早期がん以外(したがって分類上「進行胃がん」といっても、限りなく早期胃がんに近いものから、他臓器浸潤があるものまで含まれ、「進行胃がん」すなわち「治らないがん」ではありません)。
胃がんの進行度
日本には「胃がん取り扱い規約」という胃がんの進行度を表す際の共通の約束事があり、胃がんの進行度はがんがどの深さまで広がっているか(T)やリンパ節転移の程度(N)などを目安に総合的に決定されます。それにより以下のようにガイドラインで推奨される治療法が変わります。
内視鏡(胃カメラ)で見ながらがん部を取り去る方法で、リンパ節転移の危険性がほとんどない場合に可能です。この治療ですめば患者さんの負担は著しく軽くてすみます。ですか
ら、他院から当科に紹介された患者さんでも、再検討し適応があれば当院消化器内科で施行していただきます。ただし、切除した病変を顕微鏡で検査しリンパ節転移の可能性が高けれ
ば、手術による切除をすすめる場合もあります。
1. 腹腔鏡下手術
内視鏡的粘膜切除術と比較して十分な切除範囲を得られる上、開腹手術と比較して低侵襲であることから術後早期の回復が可能な方法です。1cm径の管をお臍の近くの腹壁に挿入し、そ
こから腹腔鏡というカメラをお腹の中に挿入してモニターで観察しながら、他の数カ所から入れた鉗子を使って手術をします。それに加えて、通常の開腹術よりも小さな4~5cmの傷を
加えることで、通常開腹で施行するのと同様な範囲の手術も可能になってきました。腹腔鏡手術については別項にも詳しく説明しています。
2. 機能温存手術
当科では、胃の出口(幽門)の重要な機能に注目し、幽門の血流とその運動を司る神経(迷
走神経)を損なわずに幽門を残す、幽門機能温存手術を他施設にさきがけて施行してきており、実績をあげています。
胃の壁は、内側の粘膜層から、粘膜下層、筋肉層、漿膜下組織、漿膜層までの、5層構造をしています。胃がんは粘膜層に発生します。これが次第に成長して大きくなります。
このうち横の方への広がりに関係なく、下の方への広がりが粘膜下層を越えないものを、早期胃がんといいます。逆に筋肉層より深く広がったものを、進行胃がんといいます。
早期がんは転移(がん細胞の一部が、胃から外へ移動し、どこかに定着し、そこで成長すること)がほとんどなく、あっても近くのリンパ節に留まる場合が多いため、手術で完全に取り除くことができます。進行がんの場合、進行の程度により、遠くのリンパ節や肝臓、膵臓など周囲臓器に病変が広がっていき、手術で完全に取り除くことができない状態になります。
胃がんの予防には早期発見が必要ですね。
手術療法
胃がんの手術として、標準的には胃切除(胃の2/3以上)と第二群のリンパ節郭清を行います(定型手術)。また、早期胃がんでは切除範囲やリンパ節郭清を小さくしたりすること
もあり(縮小手術)、また施設により、腹腔鏡の補助下に手術が行われたりもします。逆に、がんが広い場合には胃全摘術が行われることもあり、広い範囲をとることもあります
拡大手術)。
がんがさらに進むと、病巣を取り除くことが困難となり、通過障害を回避し、食事が通るよ
うにするためのバイパス手術をすることもあります。
化学療法
飲み薬や注射による抗癌剤を用いてがん細胞を殺したり、増殖を抑えたりして、手術で取れなかったり、再発が予想される場合に使用します。
ただし、現在のところ、抗癌剤だけでがんを死滅させることは困難と言わざるをえません。
また、抗癌剤以外の代替治療として「免疫療法」や「健康食品」などがあげられますが、こ
れについては、投与したことにより明らかに、延命したという証拠は確認されていません。
その他
放射線療法は、がんの組織を高エネルギーのX線で攻撃するものですが、手術によるほどの効果を期待できず、手術できないものや、再発の場合が適応とされます。緩和療法は、がん
に伴う症状を和らげるために行います。
胃がんの進行度
胃がんの進行度を表すのに病期分類が用いられます。病期とはがんの広がりを分類する国際的な取り決めです。胃がん病巣そのものの広がりと、リンパ節や肝臓、腹膜への転移の状況を組み合わせて、Ⅰ期からⅣ期までの病期(ステージ)を決めます。
がん(原発巣といいます)の広がり
T1:粘膜内、または粘膜下層に留まるもの。すなわち、早期胃がんです。
T2:筋層、または漿膜まで達したもの。進行がんですが胃壁の中に留まるものです。
T3:がんが胃の外まで広がったもの。
T4:がんが胃の周囲臓器にまで及んだ場合。
リンパ節転移の程度
これには細かい規約がありますが、概略次のようになります
N0:リンパ節転移がないもの
N1:がんに近いリンパ節に転移があるもの
N2:胃の血管周囲リンパ節など、がんからやや遠いリンパ節に転移があるもの
N3:大動脈周囲など胃から遠いリンパ節に転移があるもの。
肝転移の有無 肝臓に転移がないもの肝臓に転移があるもの腹膜転移の有無
P0:腹膜に転移がないものP1:腹膜に転移があるもの遠隔転移の有無
急性リンパ性白血病生存率
M0:遠くの臓器に転移がないもの遠くの臓器に転移があるもの
1.胃の解剖と生理
急性リンパ性白血病生存率
胃は食道と十二指腸の間にある嚢状の消化管で上腹部中央に位置します。
食道に続く部分が噴門、十二指腸に続く部分が幽門で、おおまかに中央部を体部、噴門側を
急性リンパ性白血病生存率
胃底部、幽門側を前庭部といいます。
また、胃癌取り扱い規約では、胃を3等分して上部、中部、下部に分けています。
急性リンパ性白血病生存率
胃の壁は他の消化管と同様5層からなり、食物が通る内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜(腹膜)となります。
急性リンパ性白血病生存率
胃液は粘膜にある腺組織から分泌されます。また、がんはこれら腺組織から発生するものがほとんどです。
急性リンパ性白血病生存率
胃は食物を胃液と混じて消化して細かくし、少しずつ十二指腸へ送り出し、小腸で栄養物のさらなる消化吸収を助けます。
急性リンパ性白血病生存率
胃液のほとんどは塩酸(胃酸)で、消化酵素はわずかしか含まれていません。それ以外には、ビタミンB12を小腸で吸収されやすくする物質も分泌しています。
急性リンパ性白血病生存率
胃切除を行うと長期には貧血が起こることがあります。
2.胃がんとは
2008年9月24日星期三
订阅:
博文评论 (Atom)
没有评论:
发表评论