2008年11月17日星期一

白血病治療抗がん剤

診断には症状から診断する臨床診断、様々な機器を用いる画像診断、腫瘍組織による病理診断という段階があります。画像診断で最も重要なものはMRIとCTスキャンです。MRIの最大の利点は、脳を切る断面を自由に選べること、また、撮影条件を変えることにより、腫瘍の性質や脳との関係を明らかにすることが出来る点にあります(図9)。また、MR血管撮影を行うことにより、苦痛を伴う脳血管撮影を減らすことが可能になりました。しかし、撮影に時間がかかることから、小児ではかなり強い鎮静が必要であるという問題があります。
脳血管撮影は、腫瘍を栄養する血管を明らかにすることにより、手術を行う上での重要な情報を得ることが出来ます(図10)。腫瘍の種類によっては必要となります。私どもの施設では、観血的検査である脳血管撮影は必要な場合のみに全身麻酔下で行なっています。
病理診断は、専門家以外の目に触れることはほとんどありませんが、脳腫瘍の治療において極めて重要な位置を占めます(図11)。手術中に採取した組織を凍らせて診断する、術中迅速診断と、永久標本を作製した後に、時間をかけて診断する方法の2種類有ります。外科医は、術中迅速診断に基づいて腫瘍の摘出範囲を決定しますし、最終診断を待って化学療法や放射線照射の要否を決定します。病理専門医は、集学的治療チームの中で極めて重要な地位を占めています。 病理診断に必要な組織は、主として開頭による腫瘍摘出で得られますが、時に開頭手術が困難な部位に腫瘍が存在する場合があります。このような場合には、定位脳手術(ていいのうしゅじゅつ、図12)や内視鏡により腫瘍の一部を採取する生検(せいけん、バイオプシー)が行われます。
脳腫瘍の症状は3つに大別されます。
(1) 頭蓋内圧亢進症状:脳腫瘍が大きくなったり水頭症を来したために、脳圧が上昇することによって生じる、頭痛、嘔吐、意識障害などの症状を、頭蓋内圧亢進症状といいます。頭蓋内に腫瘍が発育するにつれて、脳にかかる圧は上昇していきますが、頭蓋内圧上昇は一様ではありません。腫瘍が小さいうちは圧の変化が小さく、ある一定の大きさを越えると急速に圧上昇を来して症状が現れます(図4右)。この傾向は頭蓋骨縫合が癒合していない乳幼児で特に顕著であり、頭が大きくなることにより圧を緩衝するため、腫瘍が非常に大きくなるまで発見されにくいことがあります(図4左)。
2)局所神経症状:運動麻痺や脳神経麻痺のように脳の一部分の障害による症状を局所神経症状といいます(図5)。痙攣もしばしば認められます。脳の際だった特徴として、運動や言語、視覚などの機能が特定の場所に局在しているため、脳腫瘍はその発生部位により実に様々な症状を示します。言語、感情、記憶、人格などの高次脳機能は人として最も大切な機能であり、脳腫瘍の恐ろしさはこのような機能にまで障害が及びうるところにあります。
3)内分泌症状:脳には下垂体という内分泌器官が付属しているために、その機能不全あるいは機能過剰から生じる末端肥大、クッシング症候群などの症状を内分泌症状といいます(図6)。胚細胞腫の中にはでは思春期早発が見られることがあります。小児ではホルモンを産生する下垂体腺腫は稀であり、むしろ下垂体機能が障害されることによる症状を呈することが主となります。下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンが障害されると、大量の尿が出る尿崩症(にょうほうしょう)になります。尿崩症で発症する腫瘍も稀ではありません(胚細胞腫)。下垂体前葉から分泌される甲状腺刺激ホルモンや副腎皮質刺激ホルモン、成長ホルモンの分泌障害も成長期には大きな問題となりますが、これらのホルモンは幸い薬によって補充することが出来ます。
頭蓋内圧が亢進するもう一つの大きな要素として水頭症があります。小児の脳腫瘍は正中部あるいは小脳や脳幹に発生しやすいことから、高率に水頭症を伴います。例えば小脳正中部に発生した腫瘍のために髄液の流れが妨げられることにより、脳室が拡大します(図7)。症状は頭蓋内圧亢進症状を呈します。
脳は髄液に浮かぶように存在します。脳の中には髄液に満たされた複雑な形をした脳室が存在します。脳室系は側脳室、第3脳室、第4脳室の異なった部屋に別れており、側脳室内に存在する脈絡叢という組織で作られた髄液はモンロー孔という狭い穴を通って第3脳室に移行し、次に中脳水道という最も狭い管状の構造を経て第4脳室に移行した後、脳室から出て脳表のくも膜下腔で吸収されます(図8)。成人では脳室内の髄液量は150ml、1日の産生量500ml 近くになるとされます。モンロー孔や中脳水道などの狭い部位の近くに腫瘍が発生すると、容易に髄液の流れがせき止められて、上流に髄液が貯溜するため水頭症が発生します。
水頭症の治療は、髄液の流れを止めている腫瘍を取り除く手術、貯まった髄液をお腹の中に導いて吸収させる脳室?腹腔短絡術(のうしつーふくくうたんらくじゅつ、シャント手術)、あるいは、第3脳室の底に内視鏡で穴を空けて髄液が脳表に直接流れるようにする手術があります。それぞれに一長一短があり、個々の条件に最も適した方法を選択します。
小脳には胎生期の未分化な神経上皮細胞、すなわち神経細胞と神経膠細胞に分かれる前の細胞が存在し、その細胞からは髄芽腫(ずいがしゅ)が発生します。一方、松果体部や神経-下垂体部には、非常に未熟な胚細胞(はいさいぼう)が存在し、それから胚細胞腫が発生します。胚細胞腫には様々な種類の腫瘍が含まれており治療に対する反応も異なります。下垂体の周囲には、下垂体腺腫や頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)というような腫瘍も発生します。グリオーマ、髄芽腫、胚細胞腫に関してはそれぞれからお話があります。
グリオーマと髄芽腫は、いずれも神経上皮系腫瘍に分類されますが、髄芽腫はより未熟な細胞に由来します。分類2以下の腫瘍も様々な種類の腫瘍に細分類されることから、脳腫瘍の組織分類は膨大なものになるため、ここにはその一部を示すにとどめます。
4 脳腫瘍の種類  脳腫瘍とは脳に出来た腫瘍の総称であり、一つの腫瘍を示すものではなく、脳に存在する様々な細胞から腫瘍が発生します。脳の中には、まず、神経細胞がありますが、分裂能を持たない細胞のため腫瘍が生じることは稀です。一方、神経細胞と神経細胞の間に膠(にかわ)のように存在する、神経膠細胞(しんけいこうさいぼう)は、様々な刺激によって分裂する能力を持つこと、また数が多いことから、高頻度に腫瘍を形成します。神経膠細胞から生じる一群の腫瘍を神経膠腫(グリオーマ)と呼びます。グリオーマには、星状神経膠細胞、乏突起神経膠細胞などの種類があり、それぞれ異なった性質の腫瘍が発生します。また、それぞれのグリオーマの悪性度によってもグレード1から4まで(高いほど悪性)分類されるため、グリオーマ一つをとっても、実に様々な病理診断が下されることになります。病理診断は手術によって摘出した腫瘍組織を薄い切片にして、様々な染色法を加えて病理専門医が決定します。治療はこの病理診断に基づいて成されるため極めて重要です。小児脳腫瘍の種類と発生頻度は、グリオーマの中の星細胞系腫瘍の頻度が最も高く、髄芽腫、胚細胞腫がそれに続きます(図3)。この3種類の腫瘍は、小児期に頻度が高い腫瘍であるということに加えて、外科的治療以外に化学療法や放射線治療など、複数の専門家による集学的治療が必要であるという特徴を有します。
脳腫瘍の治療を理解する上で、発達期の脳の特徴を理解することが重要です。こどもの脳は急速に発達しています。特に3才までの発達が著しいことは、頭の大きさを示す頭囲曲線の推移を見れば一目瞭然です(図1)。この間に、神経細胞は軸索を伸ばしたり、他の神経細胞との間にシナプスを形成したりして大きくなります。また、神経細胞から出る電線に相当する軸索の周囲を、ミエリンという物質が何重にも取り囲む、髄鞘化という過程が進行します。このような時期に放射線照射が行われると、将来様々な脳障害を生じる可能性が高くなることが知られています。一方、可塑性(脳障害からの回復力)が大きいという利点もあり、しばしば驚異的な神経機能の回復?発達を示します。
脳腫瘍は様々であり、手術のみで治る腫瘍と集学的治療を要する腫瘍があります。
小児悪性脳腫瘍の治療には、様々な専門家チームからなる集学的治療が不可欠です。
現在の治療法では治らない腫瘍に対しては、新しい治療法の開発が必要であり、そのためには治験(治療研究)が重要になります。
参考文献:
西 基:我が国における悪性新生物による小児死亡の変化、小児がん、2000
松谷雅生:脳腫瘍第2版、篠原出版新社、1996
医学図譜集 III神経編、1989 編 2001
図の説明:
図1: こどもの脳の発達。3才までに急速な発達を遂げるため、この時期での放射線照射は高率に脳障害を来す。
図2: 小児脳腫瘍の種類と発生頻度。グリオーマ、髄芽腫、胚細胞腫瘍の頻度が高い。
図3: 脳腫瘍の分類。世界保健機構(WHO)の分類から大分類の部分を抜粋して示している。それぞれの腫瘍の中に細分類が存在するために、脳腫瘍の種類は大変多くなる。詳しくはに新しい分類についての情報がある。
図4: 脳腫瘍と頭蓋内圧亢進の関係。脳は頭蓋骨に囲まれた閉鎖された空間に存在するために、脳腫瘍が発生して徐々に大きくなると頭蓋内の圧が上昇する。図の左のように徐々に大きくなる腫瘍では、頭蓋が広がることにより頭蓋内圧が緩衝されて、巨大なサイズに達して始めて頭蓋内圧亢進症状を呈することも小児では稀ではない。
図5: 脳における機能局在と局所脳神経症状。
図6: 内分泌症状。
図7: 脳腫瘍と水頭症。左:小脳正中部に白く造影される円型の腫瘍が存在し、髄液の流れがせき止められている。右:脳室拡大が生じている(水頭症)。
図8: 脳室系と髄液循環。
図9: 画像診断。左:MRI( 磁気共鳴画像診断法)は腫瘍の存在部位、性質を正確に知ることが出来る。右:脳血管撮影では腫瘍の栄養血管が描出されており、手術法を考える上で重要な情報となる。
図10: 病理診断。H-E染色。髄芽腫と星細胞腫とでは細胞密度、形態の違いから診断がつ
けられる。
図11: 定位的脳手術による腫瘍生検。
図12: 2才、男児、脈絡叢乳頭腫の例。左:術前MRIで側脳室内に巨大な脳腫瘍が存在する。右:全摘出術後MRIで残存腫瘍はなく、完治。左側頭葉から進入しているが神経症状は残していない。
図13: 14才、女児、頭蓋咽頭腫の例。左;視床下部?下垂体部に大きな腫瘍が存在す
る。右:手術で大部分を摘出したが、視床下部に癒着する一部は危険なため残さざるを得なかった。放射線照射を追加して再発を認めず正常の学生生活を送っている。
図14: 神経膠腫(グリオーマ)。正常組織との境界がないために外科的治療が出来ない。 Netterの図譜より引用。
図15: 11才、女児。脳深部に存在する正常脳組織との境界がない神経膠腫のMRI。 T1強調画像では一見境界を有するように見えるが、T2強調画像では境界がないことが判明。
図16: 髄芽腫の脊髄播種性転移。左:小脳正中部に円型の髄芽腫が存在する。右:脊髄MRI にて髄液に乗って転移した脊髄転移巣を認める。
図17: 化学療法に感受性が高い胚腫の例:左:術前MRで大きな神経下垂体部腫瘍を認める。右:部分摘出を行った後、化学療法を行うことにより速やかに腫瘍は消失した。
治療という面から見ると、脳腫瘍は概ね3種類に大別することが出来ます。すなわち、外科的治療が第1であり、手術により全摘出すると治る腫瘍というものがあります。例えば小脳星細胞腫、脈絡叢乳頭腫、上衣腫の一部などは全摘出できれば治癒します。小児に発生した、左側脳室内の大きな脈絡叢乳頭腫を示します(図13)。側頭葉の一部を切開することにより全摘出が可能であり、それにより治癒して術後に何ら神経症状を残しません。
一方、全摘出できれば治るのだけれども、しばしばそれが困難である一群の腫瘍があります。例えば、頭蓋咽頭腫の様に発生部位が手術困難なため安全な全摘出が困難な場合があります。このような場合には部分摘出にとどめて放射線照射を追加したり、再発時に再び手術を行ったりします。視床下部?下垂体部に生じた頭蓋咽頭腫の例を示します(図14)。
そして最後に、外科的治療だけでは治すことができない悪性脳腫瘍のように、集学的治療が不可欠な腫瘍があります。グリオーマ、髄芽腫、胚細胞腫等の腫瘍では、外科的治療は治療のスタートポイントに過ぎません。標準的な治療として、外科的治療、放射線治療、抗腫瘍


白血病治療抗がん剤

剤を用いる化学療法の3つがあります。免疫療法や現在開発中の遺伝子治療などは、標準的治療と呼べるまでにはなっていません。集学的治療とは、複数の専門家により異なった治療


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法を最も効率的に組み合わせて最良の効果を得る治療法を意味します。小児脳腫瘍治療におけるキーワードは集学的治療であるといえま

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これらの腫瘍が集学的治療を必要とするのにはいくつかの理由があります。グリオーマは、神経細胞と神経細胞の間に膠のように存在する神経膠細胞から発生するために、正常の脳組

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織の中にしみこむように発育する性質を有しています(図15、Netter図譜より引用)。
例えば、脳深部の基底核部に発生したグリオーマでは、正常脳組織と置き換わるように発育

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しているために、腫瘍を摘出することはすなわち脳組織を摘出することになってしまうため外科的治療は不可能です(図16、脳幹部グリオーマ)。

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また、髄芽腫や悪性の胚細胞腫、グリオーマの中でも悪性度の高い神経膠芽腫などは脳組織に浸潤するのみならず、髄液に乗って遠くに転移する性質があります(図17)。

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これらの腫瘍は、やっかいな性質を持っているとはいうものの、一方では放射線や化学療法に対する感受性が高いという性質も併せ持っています。腫瘍を部分摘出した後に、化学療法

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を行うことにより短時間で腫瘍が消失することもあります(図18)。このように、放射線や化学療法が有効であるということによって、治療への希望をつなぐことが出来ます。


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