子宮がんは、女性にできる悪性腫瘍で、発生部位により二つに分けられます。子宮頸部に発生する子宮頸ガンと、子宮体部の粘膜にできる子宮体がんです。両者は好発年齢、発生原因、症状、組織像や治療内容が異なるため区別して扱う病気です。
●子宮頸がん
膣の内面は、扁平上皮という粘膜で覆われていますが、その上部の子宮頸管の内側は円柱上皮という粘膜で、おもにこの境界部にがんができます。
子宮頸がんは子宮がん全体に対し約7割を占め、若い年代(40代)に多く、扁平上皮がんと呼ばれる種類です。ただ子宮ガン検診の普及により減少傾向にあります。初期には自覚症状はありませんが、病状が進行していくと不正出血やおりもの、腰痛や下腹部の痛みなどが出てきます。
●子宮体がん
子宮の奥の赤ちゃんを育てる部分を子宮体部といい、その子宮体部の粘膜にがんができます。おもに閉経後の50歳以上の人に発生しますが、若い人の場合は、不妊症の人や卵巣機能に障害がある人に起こります。症状には、まず不正出血があげられ、月経異常や、閉経後では月経のような出血があらわれます。進行すると、おりものの量が増え、さらに進むと強い悪臭を伴います。子宮体がんは一般に、子宮頸がんより進行は遅いといわれています。以前は子宮頸がんが子宮がんの大半を占めていましたが、最近では食生活の欧米化や高齢化などにより子宮体がんが増加傾向にあり、上皮内がんの段階で発見されることは稀です。子宮体がんがほとんど全て腺がん(内膜腺由来)であるのに対して、子宮頚がんは扁平上皮がんと腺がんに分類されます。かつては大多数を扁平上皮がんが占めていましたが、ここでも腺がんが近年急速に数を増やし、進行子宮頚がんのかなりの割合を占めるに至っています。
?原因?
●子宮頸がん
ヒトパピローマウイルスによる感染であることがかなり明確になってきています。この感染に何らかの他の要因が加わり、発がんすると考えられています。感染は性行為によって発生し、それ以外の感染は極めて稀とされます。現在までのところ、感染から何年で発症するかは諸説があり、はっきりしていません。
●子宮体がん
発生や進行に女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)が影響を与えていると考えられています。このため、未婚、未妊、卵巣機能不全、肥満、高脂血症、糖尿病などの人はエストロゲンが子宮内膜に働いている時間が長くなるため、子宮体がんのリスクを高めるといわれています。子宮体がんの場合も、前がん病変として子宮内膜増殖症が注目されています。
現在、子宮内膜増殖症は4つに分類されています。
◆単純型子宮内膜増殖症
◆複雑型子宮内膜増殖症
◆単純型子宮内膜異型増殖症
◆複雑型子宮内膜異型増殖症
このうち子宮内膜異型増殖症複合型は子宮体がんの前段階と考えられており、このタイプの増殖症が、がん組織と共に存在していることもしばしば認められます。これ以外の3つの増殖症は、いずれもがん化の確立は低いと考えられています。 また、近年の食?生活習慣の欧米化、ストレスや喫煙?環境ホルモンによる活性酸素の増加などが子宮体がんの増加を促す要因となっています。
?予防?
早期発見であれば完全に直るものなので年に一度ぐらいの頻度で定期検診を受けるのが対策のひとつです。子宮頸がんの要因である感染症を防ぐために身体や局部を清潔に保つことも予防対策になります。また、日常の生活習慣や食生活と子宮がんは、密接な関係にあるといわれています。
生活習慣では禁煙、アルコールの過剰摂取をしない、バランスのとれた食事する、暴飲暴食を避ける、適切な運動?休養をとり、ストレスをためない工夫を心がけましょう。特に食べ物では、高塩分?高コレステロール食は避け、繊維質?緑黄色野菜?魚類や、がんを抑える作用があるといわれる大豆食品をたくさんとるようにしましょう。
また、近年がんの発生要因とされている「活性酸素」を抑える物質を多く含む食品を摂ることも有効ながん予防策です。活性酸素を消去する物質としては体内で作り出される抗酸化酵素と食事等から摂取する抗酸化力のあるビタミンA?C?E?B群やポリフェノール?カロチノイド、大豆イソフラボンなどがあります。子宮がんは早期発見?早期治療が重要であり初期段階では自覚症状のない場合が多いこの病気は、早期発見のためにも定期健診を受けることが大変重要です。特に子宮頸がんは、早期に発見して治療すれば、ほぼ100%治るがんだといえます。子宮ガンは、早期に発見して治療すれば治ります。毎年、子宮ガン検診を受けていれば、子宮ガンで死ぬことはまず有りません。
しかし、不正性器出血等の症状を認めてから産婦人科を受診するような場合には、手遅れで命を失うことも少なくありません。
我が国では、昭和30年頃から、子宮ガン検診が実施されるようになりました。その結果、早期発見?早期治療の子宮ガンが増え、子宮ガンで死亡する人が、減少しています。
初期の子宮ガンは、無症状です。今でも「何とも無いから、検診を受けない!」と頑張る方がまだ居ますが、それは誤りです。健康に自信がある方こそ、子宮ガン検診を受けて欲しいものです。
性交渉の経験が有る御婦人は、毎年1回、子宮ガン検診を受けることをお勧めします。毎年受診していれば、たとえ子宮ガンになっても、早期発見が可能です。手術で100%治すことができます。
子宮ガン検診は、細胞診と言う方法で検診を行います。子宮の出入口を、綿棒(又はヘラ)で擦って、そこから採取した細胞を顕微鏡で調べる、そういう検査です。検査の所要時間は約1分間。
子宮ガンは子宮の出入口(子宮頸部)に発生する子宮頚ガンと子宮の奥(子宮体部)に発生する子宮体ガンとに分けられます。子宮ガンの7~8割は、子宮頚部に発生します。一般に子宮ガン検診と言えば子宮頚ガンを指している場合が多いです。
しかし、最近、子宮体ガンの発生頻度が徐々に増加しています。そのため、昭和62年から子宮体ガン検診も、同時に施行されるようになりました。ただ、子宮体ガン検診は、子宮頚ガン検診に比べれば、検査精度が少し低く、若干の見落としが有ります。
30~40年前迄は、「不正性器出血が有ったら子宮(頚)ガンを疑え」と言われていました。しかし、最近では、子宮頚ガンの大部分が、検診で発見された無症状の子宮頚ガンです。それら無症状のうち、早期発見?早期治療された子宮ガンは、治っております。
残念なことに、婦人科検診を全く受けず、不正性器出血や、悪臭を伴う帯下等、進行子宮ガン特有の症状を呈してから、産婦人科外来を受診する方がまだ居ます。
平均的な日本女性は、50歳前後で閉経(月経が止まること)ですが、その後40年間生き続けます。閉経は、女の店仕舞い(ミセジマイ)ではありません。閉経は、女の人生の折返点です。
今日、60歳代、70歳代の女性も、上手に化粧をしています。お肌(ハダ)の手入れ、それは大切です。ただ、一年に一回は、お股(マタ)の手入れもお忘れなく。子宮ガン検診を受けましょう。
2000年における我が国の女性のがん死亡数は116,344人であり、そのうち子宮がんは5,216人で4.5%、部位別では8位でした。1950年以降、検診の普及により子宮がんの死亡数と死亡率は年々低下し、1950年に比べ、それぞれ0.62倍、0.41倍となっていますが、1993年を最低に以降増加傾向にあります。この原因のひとつが若年者の子宮頸がんによる死亡数の増加です。
20代の子宮がん
最近20代の子宮頸がんが増加しています。頸がんの発生率は50歳以上の中高年層ではこの20年間で順調に減っていますが、逆に20~24歳では約2倍に、25~29歳では3~4倍に増加しています。これは最近の性行動の低年齢化、多様化にともない10代、20代の女性のクラミジアや淋病など性感染症の急増とともに性感染症としてHPVに感染する機会が著しく増えたことによります。
HPV(ヒトパピローマウイルス)
子宮頸がんの約95%以上にHPV(human papilloma virus)ヒトパピローマウイルスというウイルスが検出され、HPV感染が子宮頸がんの原因であることがわかっています。HPVはヒトの皮膚や粘膜に感染しさまざまな疣(イボ)をつくるウイルスで100種類以上が知られており約30種類が女性性器に感染します。 このHPVは性交渉によって感染しますが性交経験のある女性の約80%に感染するありふれた感染症で、そのほとんどは排除され消えてしまいます。しかし感染した女性の10%にウイルスが残り感染が長期化(持続感染)し子宮頸部の細胞に異常を引き起こします。
子宮がんの検査
子宮頸がん検診は通常子宮の出口(子宮腟部、頸部)から綿棒などで細胞を擦り取って顕微鏡で観察する細胞診検査を行います。しかし従来の方法では前がん病変の検出感度が50~60%という報告もあり、米国では一時期、検査の精度の低下が社会問題となったため、さまざまな試みのひとつにHPV検査を導入しました。ハイリスク型のHPVが確認されればこれからがん化する可能性のある病変を検出できることになり、細胞診検査と併用することで診断の精度を向上させることができます。港区では昨年より自治体としては全国にさきがけてHPV検査の併用による調査をおこなっております。
子宮がん検診
子宮頸がん検診は胃がん検診とともに最も古くから始められたがん検診であり、ほぼ40年の歴史を持っています。古くは胃がんに次いで第2位の死亡率であった子宮頸がんも検診の普及に伴い減少してきましたが、さきにお話ししたように最近は逆に増加傾向にあります。その原因のひとつに我が国の検診受診率の低さ(これは子宮頸がんにかぎりません)にあります。欧米諸国における子宮頸がん検診の受診率は約80%で、それに較べ我が国の受診率は15%にとどまり最近はさらに減少傾向にあります。
2004年、厚労省により検診は2年に1回でも良いという指針が出され今後さらに低下に拍車をかける可能性があります。ほとんどの自治体では隔年の検診を実施していますが、これは受診率の高い海外のデータを基にした指導で、そのまま我が国に当てはめることは疑問です。港区では20歳よりの毎年の検診を実施しております。
また受診率の向上をめざしていままで病変の検出率の低さが問題になっていた自己採取法にHPV検査を組み合わせた新しい検診のシステムも検討されています。港区がん検診のHPV検査はそのパイロットスタディーの意味合いもあります。
子宮がんの治療
子宮がんの治療は飲んだり塗ったりして直る薬があればいいのですが基本的には手術療法が主となり、進行がんに対しては放射線療法や化学療法も行います。最近は晩婚化と少子化のため進行がんであっても子宮を残すような術式の研究や、PDTという光線療法も行われていますが、前がん病変やごく初期のがんであれば子宮の出口を少し切り取るだけの手術(円錐切除術)で完治し、妊娠出産にも影響を及ぼしません。そのためにも毎年の検診を心がけましょう。
タバコと子宮がん
喫煙が子宮頸がんの原因のひとつであることをご存知ですか。詳しいことは解明されていませんが、HPV感染と関係してなんらかの影響を及ぼし、実際ニコチンは頸がんのがん細胞の増殖速度を高めることが示されています。またパートナーの喫煙も受動喫煙と精液中のニコチンの作用が影響すると考えられます。
私たち港区医師会の取り組み
医療費の削減がとりざたされ、メタボリックシンドロームに代表される予防医学に重点がおかれていることもあり、現状のがん検診事業は決して満足のいくものではありません。そのなかで港区は子宮頸がん検診の対象者は20歳以上で毎年の検診を実施しており、また2006年より通常の細胞診検査に加え全国の自治体にさきがけてHPV検査(20代の受診者)を併用した調査を開始しました。HPV検査の導入により、いままで信頼性の低かった自己採取による検診の正診率もたかまり、検診受診率の向上に寄与できる可能性があります。
子宮頸がんはすべてのがんのなかで唯一予防のできる、すなわちがんになる前から診断が出来るがんです。ぜひみなさんも毎年の子宮がん検診を受診されてください。
子宮癌には、子宮体部にできる子宮体癌と子宮頚部にできる子宮頚癌とがあります。子宮体部というのは子宮の本体の部分で、子宮頚部というのは子宮が膣に接する部分のことです。
日本では子宮頚癌の方が圧倒的に多く、9対1の割合になります。この傾向はどこの国でも変わらないようですが、日本よりは子宮体癌の比率が高くなっています。しかし、日本でも最近は子宮体癌の割合が徐々に多くなってきています。子宮体癌の方がたちの悪い癌なので、心配な傾向です。
子宮頚癌は、細胞診検査という集団検診の方法が確立されましたので、ごく初期の癌が見つかるようになり、死亡率が大変下がってきています。ですから定期的な検診を受けていればそれほど恐れることはありません。お産を経験した人に発生しやすい癌ですので、お産を経験した30歳以上の女性は年に1回は定期検診を受けることが推奨されています。
症状で注意しなければならないのは、不正性器出血です。頚癌が少し進行した状態になると不正出血と”おりもの”がみられます。出血量は癌の進行とともに増大します。このような症状が出た場合には、定期検診の日まで待つのではなく、すぐに産婦人科で診断を受けるべきです。
検診などで癌ということがわかった場合には、症状のすすみ具合により、様々な治療法がありますので、治療法については主治医とよく相談して決めてください。
子宮体癌は、頚癌より高齢者に多く発生します。40代~60代にかけてが最も多く発生し、閉経後に体癌を発症する人が8割以上を占めます。体癌は、頚癌と異なり出産経験がない人、不妊症の人などに多く発生します。また閉経が遅い、卵胞ホルモンを長期間使用していたなどの人でも子宮体癌が発生しやすいといわれています。
最近では、こうしたハイリスクといわれる人に対して、老人保健法で集団検診も行われるようになっています。ですからもし自分がハイリスクに入ると考えられる人は、こうした検診とか、産婦人科での定期的な検診を受けることが必要です。
子宮体癌はたちが悪いといっても、初期の段階で癌を発見すれば、9割程度の人が発見され
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てから5年以上生存するというデータも出ていますから、やはり定期的な検診が必要です。浸潤子宮癌、特に子宮頸癌の手術は、日本では広汎子宮全摘術が一般的です。この手術によ
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り子宮の切除範囲が拡大され治療成績の向上が認められ、広くこの術式が採用されてきました。この手術の切除範囲拡大によって膀胱に分布する神経の切断がやむなく行われ、膀胱の
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弛緩性の麻痺が生じる結果となり、この手術の大きな問題点となっていました。また、同時に行われる骨盤内リンパ節郭清術によって下肢からのリンパ流が骨盤内で遮断され、象の足
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のように腫れる下肢リンパ浮腫が大きな問題となり、厚生労働省の研究班の課題としても取り上げられてきております。
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当科では以前からこれらの課題に取り組み、膀胱支配神経の温存および下肢浮腫の予防に関し、日本産婦人科手術学会の「主題」発表として1997年、1999年、2001年そして2004年に取
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り上げられ、さらに日本産科婦人科学会の2004年のシンポジウム「安全性および確実性の向上を目指した婦人科手術の工夫ー広汎子宮全摘術における尿管および膀胱神経温存と下腿浮
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腫の予防を安全確実に行う方法について」としても取り上げられ、日本の子宮癌の低侵襲手術をリードしてきました。そしてほとんどの症例で膀胱神経麻痺と下肢浮腫が防止可能とな
急性骨髄白血病
ってきております。如何にしてその難問を解決にむすびつけたか、少し分かりにくいかもしれませんが述べてみます。
2011年4月12日星期二
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