通常,急速に進行する型の白血病で,正常の骨髄が造血幹細胞の悪性転化から生じたクローン性の芽球で置き換わることを特徴とする。
急性白血病には急性リンパ芽球性白血病(ALL)と急性骨髄性白血病(AML)がある。
白血病細胞は骨髄中に蓄積し,正常な造血細胞を置換し,肝臓,脾臓,リンパ節,中枢神経系,腎臓,性腺へと広がる。細胞が血液由来なので,あらゆる臓器や部位に浸潤する。ALLはしばしば中枢神経系に浸潤し,急性単芽球性白血病は歯肉に浸潤し,AMLはあらゆる部位に局所的に集積する(顆粒球肉腫や緑色腫)。白血病浸潤は,中枢神経系や骨髄を除く臓器の機能を通常はほとんど損わずに,未分化円形細胞の広がりとして現れる。髄膜浸潤により頭蓋内圧が上がり,乳頭浮腫や脳神経麻痺を伴う。骨髄中の正常造血の置換を伴う骨髄浸潤により,貧血,血小板減少症,顆粒球減少症が起こる。
症状と徴候
症状は通常,非特異的で(例,疲労,発熱,倦怠感,体重減少)正常造血の障害を反映する。発熱は原因不明であることが多いが,顆粒球減少症によって明白な,しばしば重症の細菌感染が生じる。出血は通常点状出血と粘膜出血(例,鼻出血)を伴う易傷性,または月経不順によって示される。血尿や胃腸管出血はまれである。初期に中枢神経系が侵されること(頭痛,嘔吐,被刺激性亢進を生じる)はまれである。特にALLでは,ときおり骨や関節の痛みが生じることもある。
臨床検査所見と診断
貧血と血小板減少はかなりよくみられる(75~90%)。白血球数は減少することもあれば,正常あるいは増加していることもある。白血球数が著しく減少していなければ,通常血液塗抹標本で芽球が見つかる。通常は血液塗抹標本から診断できるが,常に骨髄検査を行うべきである。ときどき骨髄穿刺による検体が低形成であることもあり,針生検が必要とされる。重症の汎血球減少症の鑑別診断においては,再生不良性貧血,感染性単核球増加症,ビタミンB12欠乏,葉酸欠乏を考慮に入れなくてはならない。
ALLの芽球は組織化学検査,および細胞遺伝学,免疫表現型,分子生物学などの検査によってAMLの芽球と識別すべきである。通常の染色による塗抹標本に加えて,ターミナルトランスフェラーゼ,ミエロペルオキシダーゼ染色,ズダン?ブラックB染色,特異的および非特異的エステラーゼ組織化学染色がしばしば有用である。
予後と治療
ALLとAML両疾患の,特に若年の患者における現実的な目標は治癒である。核型による下位分類は予後を明確にするのに有用である(表138-4参照)。
最初の目標は完全寛解で,異常臨床所見の解消,正常血球数回復,骨髄造血正常,骨髄中芽球5%未満,白血病性クローンの消失である。特異的治療法の継続的改善がなされている(後述「急性リンパ芽球性白血病」と「急性骨髄性白血病」参照)。治療計画と臨床状況は複雑に関連しているので,経験のある治療チームが要求される。可能なときはいつでも,特に危険な段階(例,寛解導入)の間は専門の医療センターで患者を治療すべきである。
支持療法:支持療法は,特にAMLの患者に重要であるが,一流の血液バンク,薬剤部,検査室と看護サービスを必要とする。通常血小板減少の結果である出血は,一般的に血小板投与に反応する。貧血(86%未満)は濃厚赤血球輸血で治療するが,大量出血による貧血の場合は,全血容量を回復させるために全血輸血が必要である。
好中球の減少した免疫抑制患者では,感染は重症となる。臨床的に感染の証拠がないときでも,細菌性敗血症が起こる可能性があるので,好中球数500/μL未満の患者では,グラム陽性微生物に対する適用を含む広域殺菌性抗生物質療法(例,セフタジジム,プリマキシン)を始めるべきである。同様に,好中球減少患者の発熱には,適当な検査と培養を行った後すぐに抗生物質併用療法をするべきである。真菌感染の頻度は増加しており,診断は難しい。抗真菌薬による経験的治療は,抗生物質療法が48~72時間で効果がみられなかった場合に適応がある。不応性肺炎の患者ではニューモシスチス-カリニやウイルス感染の可能性を疑い,気管支鏡検査や気管支肺胞洗浄によって確認し,適切に治療すべきである。しばしば顆粒球輸血と併用する,トリメトプリム-スルファメトキサゾール(TMP-SMX),アムホテリシン,アシクロビルによる経験的治療がしばしば必要である。顆粒球輸血はグラム陰性敗血症のある好中球減少症の患者に有用だが,予防投与としての効果は立証されていない。薬物誘発性の免疫抑制状態にある患者で日和見感染のリスクを有する場合は,ニューモシスチス-カリニ肺炎を予防するためにTMP-SMXを投与すべきである。
白血病細胞が急速に破壊される初期治療期の患者における高尿酸血症,高リン酸血症,高カリウム血症は,補液や尿のアルカリ化や電解質モニタリングによく注意することによって予防できる。高尿酸血症は,キサンチンから尿酸への転換を抑制するためにアロプリノール(キサンチン酸化酵素阻害剤)を化学療法開始前に与えることにより,最小限に抑えられる。
ALLやAMLの治療の基本的原則は同様だが,薬物投与方法は異なる。
急性リンパ芽球性白血病
(急性リンパ性白血病)
ALLは小児に最も一般的な悪性腫瘍であり,発病のピークは3~5歳である。思春期にも起こり,成人に2番目の小さなピークがある。
予後良好因子には,年齢3~7歳,白血球数25,000/μL未満,FABL1形態(表138-4参照),白血球細胞核型で染色体数50以上および t(12;21),診断時に中枢神経系病変がないことが含まれる。予後不良因子には,白血球細胞核型で染色体数は正常だが形態が異常である(偽性2倍体),高年齢の成人,B細胞免疫表現型で細胞表面や細胞質内免疫グロブリン陽性などが含まれる。
危険因子に関係なく,初回寛解の可能性は小児で95%以上,成人で70~90%である。小児の3分の2は再発することなく継続的に5年無病生存し,治癒すると思われる。治療の危険性と毒性が高くなるよりも,治療がうまくいかずに死にいたる危険性が高くなる方が重大であるので,大部分の研究プロトコルでは危険因子の少ない患者にもより強力な治療を選択する。
いくつかのプロトコルは,初期に強力な併用化学療法を導入することを強調している。連日経口プレドニゾンと毎週のビンクリスチン静注にアントラサイクリンかアスパラギナーゼのどちらかを加えることにより,寛解へ導入できる。初期治療に導入される他の薬物やその組み合わせは,シタラビンとエトポシド,およびシクロホスファミドである。一部のプロトコルでは,メトトレキサート中等量または大量静注がロイコボリンで解毒しながら投与される。薬物の組み合わせと投与量は,危険因子が存在すれば変更される。白血病性浸潤の重要な場所は,髄膜であり(176章の「亜急性および慢性髄膜炎」参照),予防と治療には,メトトレキサート,シトシン-アラビノシド,コルチコステロイド脳脊髄腔内大量投与がある。脳神経系または脳全体の放射線照射が必要であることもあり,ハイリスクの患者の中枢神経系病変には必須である(例,高白血球数,高血清LDH,B細胞表現型)。
大半のプロトコルにメトトレキサートやメルカトプリンによる維持療法が含まれる。治療は通常2.5~3年継続するが,初期段階での治療がより強力なプロトコルでは短くなる。2年半完全寛解を持続した患者の治療停止後の再発危険率は約20%で,通常1年以内に起こる。このように,治療中止の際に大半の患者は治癒している。
再発は通常,骨髄に起こるが,中枢神経系や睾丸において単独に,または骨髄に併発して起こることもある。骨髄再発はゆゆしき事象である。小児の80~90%の患者で再寛解を得ることができるが(成人では30~40%),その後に続く寛解は短い傾向にある。しかし,遅い骨髄再発をした患者のごく少数は,2度目の長期無病寛解に入り治癒することもある。HLAの一致する兄弟がいれば,2度目の寛解中に多くの患者に骨髄移植(BMT)を行うことが勧められる(149章参照)。
効果的な中枢神経系予防をした患者においても,中枢神経系白血病が再発の最初の徴候であることもある。治療にはメトトレキサートを(シタラビンまたはコルチコイドとともに,あるいはなしで)すべての徴候が消えるまで,週2回脊髄腔内に注射する。全身に芽球が広がる可能性があるので,大半のプロトコルでは,全身性再寛解導入化学療法を行う。連続脊髄腔内薬物投与や中枢神経系照射の役割は明らかにはなっていない。睾丸再発は,睾丸の無痛性の堅い腫大で臨床的に明らかなこともあれば,ルーチン生検でわかることもある。片側の睾丸再発の臨床的証拠があれば,外見上異常のないもう一方の睾丸の生検を行うべきである。治療は,睾丸の放射線照射であり,中枢神経系単独再発についていえば全身性再寛解導入療法である。
急性骨髄性白血病
(急性骨髄系白血病,急性骨髄球性白血病)
AMLの罹患率は年齢とともに高くなる;AMLは成人により多くみられる急性白血病である。AMLは化学療法と放射線照射に随伴することもある(続発性AML)。
最も重要な予後因子は年齢,先行する骨髄異形成期,続発性AML,白血病細胞核型(表138-4参照),白血球数,およびアウエル小体の存在である。FAB分類だけでは治療反応性を予測できない。寛解導入率は50~85%である。50歳以上(特に65歳以上)の患者は寛解に到達することが少ない。寛解に到達しないのは,死亡あるいは感染に対する薬剤耐性,低形成期の出血による。
長期間の無病生存は20~40%の患者でみられることが報告されており,骨髄移植を受けた若い患者では40~50%と高くなる。続発性AMLを発症した患者は,予後が悪い。
初期の治療目標は寛解導入である。AMLに有効な薬物はより少ないので,AMLの治療はALLと大きく異なる。基本的な導入療法は,シタラビンの5~7日間の連続点滴静注である;ダウノルビシンまたはイダルビシンは,この間3日間静注で与えられる。6-チオグアニン,エトポシド,ビンクリスチン,プレドニゾンを含むプロトコルもあるが,これらがどれほど貢献しているかは不明である。AMLの治療は通常重大な骨髄抑制を引き起こし,しばしば骨髄が回復するまで長引く。この間には注意深い予防措置と支持療法が必須である(前述参照)。
急性前骨髄球性白血病(APL)と他のAMLの症例では,初診時に汎発性血管内凝固症候群(DIC)が生じ,白血病細胞溶解によって凝固因子が放出されるにつれ悪化する。APLでは,DICは全トランス型レチノイン酸によって2~5日で治療され,ダウノルビシンやイダルビシンと併用すれば患者の80~90%が寛解に達する。
多くのプロトコルでは寛解後も,同一あるいは他の薬物による一定期間の強化療法が含まれる;シタラビンの高用量療法は,特に60歳以下の患者の強化療法として行うと寛解率を改善させる。全身性白血病がうまくコントロールされるようになれば,中枢神経系白血病が合併症として頻発しなくなるので,中枢神経系白血病の予防は通常行われない。強化療法を受けたAMLの患者における維持療法の役割は立証されていない。髄膜外の部位における単独再発はあまりない。
慢性白血病
慢性リンパ球性白血病
(慢性リンパ性白血病)
リンパ節やリンパ組織を侵す成熟した外観をもつリンパ球のクローン性増殖で,骨髄への進行性浸潤と末梢血での存在がみられる。
症例の75%が60歳以上で診断される。CLLは男性の方が女性より2倍多く罹患する。原因は不明だが,症例によっては家族性のこともある。CLLは日本と中国ではまれであり,日本人の米国移住者の間では増加していないようであるので,遺伝因子が示唆される。
病理
リンパ球の蓄積はおそらく骨髄で始まり,リンパ節や他のリンパ組織に広がってゆく。脾腫が生じる。通常,疾患晩期で造血異常により貧血,好中球減少,血小板減少が生じ,免疫グロブリン産生が低下する。多くの患者が低γグロブリン血症と抗体産生異常を生じるが,それはときにサプレッサーT細胞活性の増加に関係があるように思われる。他の免疫調節異常は,免疫性溶血性貧血(通常クームズ試験陽性),血小板減少によって特徴づけられる自己免疫疾患を伴いやすいことである。二次性の悪性腫瘍の危険性はある程度高い。
伝統的にCLLに対する記述は最も一般的な亜型(つまりB細胞型)に対するものであった。そして,その亜型は,ほぼ全ての症例を占めている。2~3%の症例ではT細胞のクローン性増殖があり,このグループにさえも亜型がある(例,汎血球減少を伴う大顆粒リンパ球)。それに加えて,他の白血病の型もCLLに分類されてきた:すなわち,前リンパ球性白血病,皮膚のT細胞リンパ腫の白血病期(すなわちセザリー症候群),有毛細胞白血病,白血性リンパ腫(すなわち悪性リンパ腫の進行した段階でみられる白血病性急性転化)である。典型的なCLLとこれらの亜型の識別は通常簡単である。
症状と徴候
CLLの発症は通常徐々に起こり,最初はしばしば付随的な血液検査から,または無症状のリンパ節腫大の評価中に診断される。症状のある患者は通常非特異的な訴えを有する。それらは,疲労,食欲不振,体重減少,労作時の呼吸困難,および(脾腫や蝕知可能なリンパ節による)腹部膨満感である。初期所見には全身性リンパ節腫大と軽度から中等度の肝腫と脾腫がある。進行性となると,貧血による顔面蒼白を示すこともある。皮膚浸潤がT細胞CLL患者の特徴となることもある。細菌,ウイルス,真菌に対する易感染性は低γグロブリン血症と顆粒球減少症によって疾患後期に生じる。
検査所見と診断
CLLの特徴は持続するリンパ球の絶対的増加(5000/μL以上)と骨髄中のリンパ球増加(30%以上)である。診断時には,まれに骨髄浸潤(症例の10%),脾腫,または免疫性溶血性貧血と免疫性血小板減少によって中等度の貧血と血小板減少が存在することもある。低γグロブリン血症を生じる患者もおり(症例の15%以下),ときには白血病細胞の表面にみられるものと同じ型の単クローン性血清免疫グロブリンのスパイクがみられる(症例の2~4%)。
無症状の患者の場合,CLLは異常血球数で診断がなされる。その他には,前述のような非特異的症状が潜行性に始まり,全身のリンパ節腫大のある患者ではCLLを疑うべきである。全血球計算と骨髄穿刺で診断が確定する。ウイルス感染に関連のある反応性リンパ球増加症は,臨床像と血液塗抹標本上での異型リンパ球の存在によって区別できる。B細胞CLLの白血病細胞はB細胞マーカーとCD5とCD23をともに示す。鑑別診断は免疫表現型によって容易になった。リンパ球性リンパ腫の白血病期では,CLLにみられるよりも大きい特徴的な切れ込みの入った核をもつ細胞が循環血中に存在する。セザリー症候群(すなわち,大脳様の核)や有毛細胞白血病(すなわち,細胞質突起)の細胞も十分特徴的である。
臨床的病期分類は,予後や治療法に役立つ。2つの一般的な病期分類は,主に血液学的変化に基づくRai分類と,病気の広がりに基づくBinet分類である(表138-5参照)。
予後と治療
B細胞CLLあるいはその合併症の患者の生存期間中央値は約10年である。病期0からII と診断された患者は治療なしで5~20年生きることもある。病期III あるいはIV の患者は診断後3~4年以内に死亡しやすい。進行して骨髄不全になると,通常生存年数は短い。CLL患者も二次性悪性腫瘍を起こしやすい。
CLLは進行性であるが,何年も無症状の患者もいる;進行性が明白になり,症状が生じるまで治療は適応とならない。支持療法には,貧血に対する濃厚赤血球輸血,血小板減少に伴う出血に対する血小板輸血,細菌,真菌,ウイルス感染に対する抗生物質が含まれる。感染は通常,好中球減少や無γグロブリン血症と関連する;そのため殺菌的抗生物質を使用すべきである。帯状疱疹がよくみられ通常皮膚分節まで侵される。通常アシクロビルと関連の抗ウイルス薬によく反応する。低γグロブリンで無反応性の感染症の患者に,また6カ月以内に2つ以上の重症感染症が生じた患者には予防のために,γグロブリン点滴療法を考慮すべきである。
特異的療法には化学療法,コルチステロイド,放射線療法がある。治療が生存期間を延長することは証明されていない。過剰な治療は過少な治療より危険である。
化学療法:アルキル化剤,特にクロラムブシル単独またはコルチコステロイドとの併用による治療法が,長い間B細胞CLLの通常の治療法であった。しかしながら,フルダラビンがより効果的である。生存期間を延長することは証明されていないが,他の治療よりも寛解は延長される。インターフェロンα(IFN-α)とデオキシコホルマイシン,および2-クロロデオキシアデノシンは有毛細胞白血病に非常に有効である。前リンパ球性白血病やリンパ性白血病の患者は通常,多剤化学療法を必要とするが,しばしばわずかに反応するだけである。
コルチコステロイド療法:免疫性溶血性貧血や血小板減少症はコルチコステロイド療法の適応である。プレドニゾン1mg/kg/日により,進行したCLL患者にときに著明で急速な改善がもたらされるが,反応はしばしば短い。代謝異常が生じたり,感染症の頻度と重症度が悪化するので,プレドニゾンを長く用いるときは注意が必要である。プレドニゾンをフルダラビンと併用するとニューモシスチス-カリニやリステリア感染の危険性を高める。
放射線療法:局所照射がリンパ節腫大部位,肝や脾の病変に対し,一時的な症状軽減のために行われることがある。低線量での全身照射がときおり成功を収めている。
慢性骨髄球性白血病
(慢性骨髄性白血病,慢性骨髄様白血病,慢性顆粒球性白血病)
多能性幹細胞の悪性化によって起こり,顆粒球の著しい過剰産生によって臨床的に特徴づけられるクローン性の骨髄増殖。
CMLは両性に生じる。CMLはあらゆる年齢で生じるが,罹患の中央値は45歳で,10歳より前ではまれである。
病理
CMLは,主に骨髄での,または骨髄外の部位(例,脾,肝)での顆粒球の過剰な産生で特徴づけられる。顆粒球産生が優勢であるが,悪性クローンには赤血球,巨核球,単球そしてT細胞やB細胞も含まれる。正常の幹細胞は保持されており,薬物でCMLクローンを抑制すれば出現する。骨髄は過形成であるが,通常数年後に患者の20~30%に骨髄線維症がみつかる。大半の患者でCMLクローンは移行期まで進行し,最終的に急性転化となる。この時,芽球による腫瘍が骨髄外の部位(例,骨,中枢神経系,リンパ節,皮膚)で生じることがある。
症状と徴候
患者はしばしば初期には無症状である;CMLが全血球計算時に偶然診断されることもある。他の患者では,徐々に始まる非特異的な症状(例,疲労,虚弱,食欲不振,体重減少,発熱,寝汗,腹部膨満感)により評価されることもある。初期に顔面蒼白,出血,易傷性,リンパ節腫大があることはまれであるが,軽度の,またときには重度の脾腫がみられる(症例の60~70%)。病気が進行すると脾腫が著しくなり,顔面蒼白,出血が起こる。発熱や著しいリンパ節腫大や皮膚浸潤はやっかいな症状である。
検査所見
症状のない患者の白血球数は通常50,000/μL未満である。症状のある患者の白血球数は通常20万/μL程度であるが,100万/μLに達することもある。血小板数は正常ないしは中等度に増加,Hbは通常10g/dLより高い。血液塗抹標本では,あらゆる分化階段の顆粒球系細胞がみられるが,白血球数50,000/μL未満の患者では幼若顆粒球はあまりみられないこともある。好酸球と好塩基球の絶対数は著しく上昇しているが,リンパ球と単球の絶対数は正常のこともある。有核赤血球が少し存在することもあり,血球細胞の形態は正常である。骨髄は穿刺と生検の両方で過形成である。診断時でも,ある程度の骨髄線維症を示す患者もいる。白血球アルカリホスファターゼ値は非常に低い。
染色体分析によってほぼ全ての患者(95%)にフィラデルフィア染色体(Ph,かってはPh1と記した)がみつかる。第22番染色体がしばしばph染色体と呼ばれているが,正しくは癌遺伝子c-ablを含む第9番染色体の一部が第22染色体へ相互転座t(9;22)しており,そこでは別の遺伝子bcrと融合し融合遺伝子(ABL-BCR)となり,第22番染色体の一部は第9番染色体へ転座する。ABL-BCRはCMLの病理発生と発症に重要である。Ph染色体の不明な患者もいるが,遺伝子検査をすると(サザンブロッティング)bcr遺伝子の再構成がみられる。
移行期には,貧血と血小板減少が発現する。好塩基球が増加することがあり,顆粒球分化が異常になる。幼若細胞の割合と好中球アルカリホスファターゼ値が上昇することがある。骨髄では骨髄線維症が進行し,顕微鏡下で鉄芽球がみられることもある。悪性クローンの変異によって,新しい異常核型を発現することもある。
より進行すると急性転化が起こり,骨髄芽球性(患者の60%),またリンパ芽球性(30%),巨核芽球性(10%)がみられる。こうした患者の80%で付加的染色体異常がしばしば起こる。
診断
脾種,幼若顆粒球と好塩基球および好酸球の絶対的増加を伴う白血球増加,白血球アルカリホスファターゼ低値,Ph染色体の存在により,CMLは比較的容易に診断できる。鑑別診断において,骨髄線維症患者における白血球増加は,通常有核赤血球,涙滴赤血球,貧血,血小板減少を伴う。癌や感染による骨髄系類白血病反応は,絶対的好酸球増加や好塩基球増加がなく,白血球アルカリホスファターゼ値が上昇する。
予後
Ph陰性CMLと慢性骨髄単球性白血病はPh陽性CMLよりも予後が悪い。CMLの臨床像は骨髄異形成症候群の臨床像に類似している。BMTが効果的に行える症例を除いて,治療による治癒はない。しかし,IFN-αの適用によって生存中央値は3~4年から5~8年に延長した。患者の5~10%が診断後2年以内に死亡し,その後10~15%が毎年死亡する;そのうち90%が疾患の移行期や急性転化の後に死亡する。急性転化期後の生存期間中央値は約2カ月であるが,寛解に達することができれば約8~12カ月まで延長できる。
治療
治療の目的は症状の軽減であり治癒ではない。一般に症状と身体所見は白血球数と直接関係がある;そのため白血球数を25,000/μL未満に維持すると,一般的に症状を抑えるのに有益である。
ヒドロキシ尿素や他の骨髄抑制薬によって患者の白血球数を10,000/μL未満に維持すると,長期間無症状を維持することがあるが,骨髄中にPh陽性クローンが存在し続けるので真の寛解には達しえない。疾患の初期段階にHLAの一致する提供者によるBMTを行うと長期の無病期が得られ,永久にPh陽性クローンがなくなることもある。移行期や急性転化期のBMTはあまり成功しない(149章参照)。Ph陽性CMLの場合,IFN-αによって骨髄中のPh陽性細胞は消失し,20~25%の患者が血液学的寛解に達し生存期間が延長される。IFN-α300~500万U/m2/日皮下注が大半の患者の治療に選択される;シタラビンを加えると有益である。
ヒドロキシ尿素はIFNが使えない場合の第一選択の抗腫瘍薬である。この薬物は蓄積毒性はほとんどないが,活性期間が短いため持続的に投与すべきである。白血球数は薬を中止した直後に通常増加する。投与開始時の量は一般に1~2g/日等量分割経口投与である。血球数は毎週あるいは隔週に調べ,それにしたがって投与量を調整する。
ブスルファンは勧められない。他の免疫抑制薬はCMLの慢性期の治療に使われており,6-メルカプトプリン,6-チオグアニン,メルファラン,シクロホスファミドがある。これらの薬物の優位性を示す研究は発表されていないため,ヒドロキシ尿素が選択される。
脾臓の放射線照射はほとんど行われないが,CMLが難治性の場合や,著しい脾腫を伴う末期患者に対して用いると有益なこともある。照射総量は6~10Gyの範囲で,0.25~2Gy/日に分けて照射される。治療は白血球数を注意深く評価して微量から始めねばならない。反応は通常よくない。
脾摘は腹部の不快感を軽減し,血小板減少を改善する。また,化学療法や放射線照射で脾腫をコントロールできない場合に輸血の必要性を減らすことがある。脾摘がCMLの慢性期において重要な役割を果たすという根拠はない。
急性転化期の治療によってリンパ芽球性転化を起こしている患者の約50%が寛解に達する;治療法は急性転化期の細胞の種類に基づいている。寛解期間と生存期間は短い傾向にある。骨髄芽球性転化の患者の20~25%が寛解に達するが,一般に生存期間は短い。
骨髄異形成症候群
正常,ないしは過形成な骨髄に異常な骨髄無効造血を伴うクローン性増殖疾患。
骨髄異形成症候群(MDS)は50歳以上の患者によくみられる一群の症候群である(前白血病,不応性貧血,Ph陰性慢性骨髄球性白血病,慢性骨髄単球性白血病,原因不明の骨髄様化生)。罹患率は不明であるが上昇しており,おそらく人口集団における高齢者の割合が増加していることや治療関連性白血病が増えていることに多少の原因があると思われる。ベンゼンや放射線への暴露がMDSの発現に関係することもある。一部の続発性白血病の前白血病期(例,薬物や毒への暴露)には,骨髄異形成の診断上の特徴と,さらに異常で不完全な細胞産生がみられる。
病理
MDSは赤血球系,骨髄系,巨核球系を含む造血細胞のクローン性増殖によって特徴づけられる。骨髄は正常ないしは過形成であり,無効造血のために様々な血球成分の不足が起こり,貧血が最もよくみられる。細胞産生障害のために骨髄や血中の血球に形態的異常が伴う。髄外造血が生じて肝腫と脾腫が引き起こされる。骨髄線維症がときに診断時にみられたり,MDSの過程で生じることがある。FAB分類は表138-6に示してある。MDSクローンは不安定であり,AMLに進行する傾向がある。
症状と徴候
患者はMDS分類と造血障害の程度によって様々な臨床症状を呈する。初期の症状は貧血に伴う脱力と易疲労感である。血小板と白血球の機能的ならびに数量的な異常の程度によって,出血や感染に伴う発熱がみられることもある。他の非特異的所見には,食欲不振,体重減少,(脾腫による)腹部膨満感がある。
臨床検査所見
貧血が最も多い所見であり,通常大赤血球症と赤血球大小不同を伴う。このような変化は自動血球計算機によって平均赤血球容積(MCV)と赤血球分布幅(RDW)の増加として示される。通常,ある程度の血小板減少がある;血液塗抹標本では血小板の大きさが不同で,大血小板がみられることもある。白血球数は正常である場合もあれば,増加あるいは減少していることもある。好中球の細胞質顆粒は異常であり,不同であったり顆粒数にばらつきがみられる。好酸球にも異常顆粒がみられることがある。偽ペルゲル-フェット核異常細胞もみられる。単球増加は慢性骨髄単球性白血病亜型の特徴であり,幼若骨髄細胞がより未分化な亜型でみられることもある。細胞遺伝学的パターンは通常異常であり,1つまたはそれ以上のクローン性細胞遺伝学的異常がみられるが,第5番または第7番染色体に多い。
診断
白血病予防
説明のつかない不応性貧血のある全ての患者にMDSを考慮すべきであり,骨髄異形成の形態学的特徴を伴う正もしくは過形成の骨髄によってMDSの診断を確証すべきである。芽球が占め
白血病予防
る割合は30%未満である。巨赤芽球の存在のため,葉酸とビタミンB12濃度の測定が必要となる患者もいる。クローン性の細胞遺伝学的異常によって診断が確定する。特異的なFAB分類
白血病予防
を決定するために,血液と骨髄を徹底的に検査すべきである。
予後と治療
予後はFAB分類(表138-6参照)と合併症によって決まる。不応性貧血や鉄芽球を伴う不応
白血病予防
性貧血の患者がより悪性のタイプへ進行するのはまれであり,無関係の原因で死亡することもある。
MDSのための治療は確定されていない。治療は支持療法であり,適応があれば赤血球輸血を
白血病予防
行い,出血に対しては血小板輸血を施行し,感染症に対しては抗生物質療法を行う。サイトカイン療法(赤血球の需要を補助するためのエリスロポエチン,重症の症候性顆粒球減少を
白血病予防
制御するための顆粒球コロニー刺激因子,および入手可能であれば重症の血小板減少のためのトロンボポエチン)は造血を補うのに重要な働きをする。同種骨髄移植は50歳以上の患者
白血病予防
には勧められない。コロニー形成刺激因子(例,顆粒球コロニー刺激因子,顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)は好中球数を増加し,エリスロポエチンは症例の20~25%で赤血
白血病予防
球産生を亢進させるが,生存期間延長に対する利益は示されていない。患者の年齢と核型を考慮に入れても,AML化学療法に対するMDSの反応はAMLにおける反応と類似している。
2012年6月6日星期三
订阅:
博文评论 (Atom)
没有评论:
发表评论