癌では腟の不正出血はめったにみられません。
卵巣が腫大し、腹部に水分がたまるため、徐々に腹部がふくらんでくることがあります。この段階になると、骨盤部の痛み、貧血、体重減少がみられるようになります。まれに胚細胞腫瘍や間質細胞腫瘍がエストロゲンを分泌し、このため子宮内膜組織が過度に増殖したり、乳房が大きくなることがあります。あるいは、これらの腫瘍から男性ホルモン(アンドロゲン)が分泌されて体毛が過度に増えたり、甲状腺ホルモンに似たホルモンが分泌されて甲状腺機能亢進症が起こることもあります。
卵巣癌の早期診断は困難です。これは、癌がかなり大きくなるまで、または他の部位に転移するまで何の症状もみられないためです。また卵巣癌と似たような症状を起こし、それほど重篤でない病気が多数あることも、早期発見を困難にしています。
診察で卵巣の腫大が見つかった場合は、卵巣嚢胞なのか癌による腫瘤(しゅりゅう)なのかを判別するために、超音波検査、CT検査、MRI検査などが行われます。癌でないと思われる場合は、2#12316;3カ月ごとに診察を受けて経過をみます。癌の疑いがある場合や、検査結果がはっきりしない場合には、へそのすぐ下を小さく切開し、細く柔軟性のある内視鏡(腹腔鏡)を挿入して卵巣を観察します。また、腹腔鏡から器具を通して組織のサンプルを採取します。さらに血液検査を行い、癌抗原125(CA125)など、癌の存在を示す物質(腫瘍マーカー)の値を測定します。腫瘍マーカーは、その値が異常を示したからといって、それだけで癌の診断が確定するわけではありませんが、他の検査結果と総合することで診断の確定に役立ちます。
腹部に体液がたまっている場合は、針で吸引し、癌細胞の有無を検査することがあります。
経過の見通しと治療
卵巣癌が疑われる場合や、卵巣癌の診断が確定した場合には、手術を行って腫瘍を切除し、癌がどの程度広がっているかを判定します(病期診断(女性生殖器の癌の病期分類*を参照))。経過の見通しは病期を基に判断されます。治療を行った場合、診断から5年後に生存している人の割合は、ステージIでは70#12316;100%、ステージIIでは50#12316;70%、ステージIIIおよびIVでは5#12316;40%となります。
手術の範囲は卵巣癌の種類と病期によって異なります。癌が卵巣外に広がっていなければ、癌がある側の卵巣と近接した卵管を切除するだけで十分な場合もあります。癌が卵巣外まで広がっている場合は、左右の卵巣と卵管、子宮を切除し、卵巣癌が転移しやすい近くのリンパ節と周辺組織も切除します。ステージIの癌の人で、片側の卵巣のみに腫瘍があり、妊娠を希望している場合は、癌のある側の卵巣と卵管のみを切除することもあります。体の別の部位まで転移した進行癌では、できる限り多くの癌を切除することにより経過の見通しが改善します。
ステージIの上皮癌では通常、手術後にそれ以上の治療は必要ありません。ステージIでも上皮癌以外の場合や、病期がさらに進んだ癌では、残っているかもしれない小さな癌を治療するため、化学療法を行います。化学療法ではパクリタキセルに、シスプラチンまたはカルボプラチンを併用します。進行した胚細胞腫瘍の多くは、ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチンの多剤併用化学療法で治癒します。放射線療法はめったに行われません。
進行した卵巣癌の多くは再発するため、化学療法が終了した後は継続的に、腫瘍マーカーの値を測定します。癌が再発した場合は、トポテカン、ヘキサメチルメラミン、イホスファミド、ドキソルビシン、エトポシドなどによる化学療法を行います。
卵巣嚢胞とは?
卵巣嚢胞とは液体で満たされた袋(嚢胞)が卵巣の内部や表面にできることで、比較的よくみられます。そのほとんどは良性で、自然になくなります。悪性の嚢胞は40歳以上の女性に多い傾向があります。
良性卵巣嚢胞のほとんどは症状を起こしませんが、ときに圧迫感や痛みが生じたり、腹部が重い感じがすることがあります。性交中に腹痛が起こることもあります。嚢胞が破裂したりねじれたりすると腹部に刺すような激しい痛みが生じ、吐き気や発熱を伴うこともあります。卵巣嚢胞の中には月経周期に影響を及ぼすホルモンを産生するものもあり、そのため月経周期が不規則になったり月経の出血や症状が重くなることがあります。閉経後の女性では、卵巣嚢胞が腟からの出血を引き起こすことがあります。こうした症状がある場合は医師の診察を受けるようにします。
診断ではまず内診が行われます。診断を確定するため超音波検査やCT検査が行われることもあります。良性と思われる場合は、嚢胞が消失するまで定期的に内診を行って経過を観察します。悪性の可能性がある場合は、へその下を小さく切開して腹腔鏡を挿入し、卵巣を観察します。血液検査も癌かどうかを判定する一助となります。
良性の嚢胞は特に治療の必要はありません。ただし、直径が5センチメートル以上あり自然に消失しない場合や、癌の可能性が否定できない場合は、嚢胞を切除することもあります。嚢胞がある側の卵巣ごと摘出する場合もあります。悪性の嚢胞がある場合は、同じ側の卵巣と卵管も摘出します。
卵巣ガンとは?
卵巣ガンは、婦人科のガンでは一番死亡率の高いガンです。これは早期発見がしづらいということが大きな理由です。初期にはこれといった症状もなく、検査でも発見しにくいからです。卵巣は子宮の両側にあり親指大の楕円形をしています。卵巣にできる腫瘍の85%は良性です。残り15%が悪性で卵巣ガンです。
どれほど多いのですか?
2000年の厚生労働省の人口動態統計によると、卵巣ガンでの死亡率は10万人あたり6人あまりで、女性のガンによる死亡では、第一位の胃ガン、第二位の肺ガンなどの順の第十位なのです。新たに卵巣ガンになる人は、1年間に6,500人ぐらいいるのではないかと推定されています。
特徴は?
婦人科検診が普及するにつれ子宮ガンは早期に発見されるようになりましたが、卵巣ガンはお腹の中にあるために早期診断が難しいのが特徴で、子宮ガンと大きく違う点です。診断がついた時点で、70%がすでに進行ガンなのです。
ガンにかかりやすい人を「リスクの高い人」といいます。卵巣ガンの10%は遺伝性といわれています。1-2等親に卵巣ガンの方がいると卵巣ガンになる率は3ー4倍や70歳までに卵巣ガンになる確率は50%、などの報告があり「リスクの高い人」ということになります。また飽和脂肪酸の含まれる食事、肥満、閉経が55歳以降と遅い、初妊娠が35歳以降、などの方も「リスクの高い人」です。逆に妊娠?分娩?授乳が多いほど、ピルの使用、子宮摘出などの方は卵巣ガンのリスクは減り「リスクの低い人」とされています。
症状は?
卵巣は腹部にあって腫瘍ができてもはじめはほとんど自覚症状がありません。腫瘍が大きくなると下腹部にしこりが触れたり、圧迫感があったり、あるいは膀胱が圧迫されて尿が近く
なるなどの症状で婦人科を受診することになります。転移しやすいガンの場合は、腫瘍が卵巣内であまり大きくならないうちに広がってしまうため、腹膜に広がり腹水のために腹部全
体が大きくなるとか、胸水がたまって息切れがするなど、進行した症状ではじめて異常を自覚することが少なくありません。2/3以上の方は転移した状態ではじめて病院を訪れます。
診断は?
卵巣は腹腔内にあり組織診、細胞診といった直接的な検査を行うことは困難であり、手術以
外には確定診断を下すことができません。通常婦人科の診察や超音波検査、MR検査などで、子宮の腫瘍か、卵巣腫瘍か、腫瘍の内部の構造、転移の有無などを調べますが、あくまで間
接的な推定診断になります。
治療は?
卵巣ガンに限らず、初期であれば手術で摘出すればいいのですが、進行の程度によっては、手術でできるだけ腫瘍を摘出して、抗ガン剤、放射線治療などを組み合わせて行います。
どういうことに気をつければいいの?
卵巣ガンは症状が無いことが多いのですから、定期的に(最低1年に1回)婦人科の検診を受
けましょう。また上に述べた「リスクの高い人」はもっと早い目に(半年に一度)検診を受けましょう。
卵巣癌は50#12316;70歳の女性に最も多く発生し、女性全体では約70人に1人の割合でみられます。婦人科癌の中では2番目に多い癌ですが、死亡数は他のどの婦人科癌より多くなっています。
卵巣癌のリスクは先進諸国の方が高くなっています。先進国では食事中の脂肪量が多い傾向があるからです。妊娠したことがない人、第1子を遅く産んだ人、月経が早く始まった人、閉経が遅かった人はリスクが高くなります。子宮体癌、乳癌、大腸癌の家族歴がある人もリス
吉井怜白血病
クが高くなります。卵巣癌の5%未満はBRCA1遺伝子に関係がありますが、この遺伝子は乳癌にも関係があります。経口避妊薬を使用すると卵巣癌のリスクは減少します。
吉井怜白血病
卵巣癌にはさまざまな種類があり、それぞれ卵巣中の異なる種類の細胞から発生します。卵巣癌の80%以上は卵巣の表面に発生する癌(上皮癌)です。残りのほとんどは胚(はい)細
吉井怜白血病
胞腫瘍(卵子を生じる細胞から発生する癌)と間質細胞腫瘍(結合組織に発生する癌)です。卵巣の胚細胞腫瘍は30歳未満の若い女性に多く発生します。ときには、体内の別の部位
吉井怜白血病
に生じた癌が卵巣に転移することもあります。
卵巣癌は周辺部位に直接浸潤するだけでなく、リンパ系を通して骨盤内や腹部の他の部位に
吉井怜白血病
転移します。また血流に乗って、肝臓や肺など離れた部位に転移することもあります。
症状と診断
吉井怜白血病
卵巣癌ができると、できた側の卵巣が腫れて大きくなります。若い女性の卵巣腫大は主に、良性の、嚢胞(のうほう)と呼ばれる液体で満たされた袋状の構造物が原因です。これに対
吉井怜白血病
し、閉経後にみられる卵巣腫大は多くの場合、卵巣癌によるものです。
この癌は進行するまでほとんど症状が現れません。消化不良の症状に似た、下腹部の漠然と
吉井怜白血病
した不快感がまず現れることがあります。このほか、腹部の張り、食欲不振(胃が圧迫されるため)、ガス痛(胃腸内のガスによる痛み)、腰痛などの症状がみられます。卵巣
2009年9月24日星期四
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