女性で自分の家系に卵巣がんの人がいる方は、卵巣がんの発生するリスクが高くなります。病気を発症する危険を高めるものをリスク因子と呼びます。
一親等(母、娘、あるいは姉妹)に卵巣がんの人がいる場合、卵巣がんの発生するリスクが高くなり、一親等と二親等(祖母あるいは叔母)の両方に卵巣がんの人がいる場合、卵巣がんになるリスクはさらに高くなります。また、一親等の中で卵巣がんの人が2人以上いる場合は、リスクがいっそう高まります。卵巣がんの中には、突然変異という変化を起こした遺伝子が次の世代に引き継がれて、それが原因で卵巣がんが発生する場合があります。
細胞の中にある遺伝子には、親から引き継がれた遺伝情報があります。遺伝性の卵巣がんは、卵巣がん全体の約5%~10%を占めています。現在まで明らかにされている遺伝様式には、卵巣がんのみが遺伝する様式、卵巣がんと乳がんが遺伝する様式、そして卵巣がんと大腸がんが遺伝する様式の3種類があります。
遺伝子に発生した変化をみつけだす検査法はすでに開発されていて、がんになるリスクが高い人では、同じ家系にある人をこうした遺伝子検査で調べる場合があります。
腫瘍の自覚症状は意外に分かりにくい
卵巣に出来る腫瘍には色々な種類がありますが?その8割が良性のもので?卵巣がんと呼ばれている悪性の腫瘍は実に残りの2割程度といわれています。最近では、年々卵巣がんにかかる人は、増えているのですが、特徴として、都市部に住んでいる女性に多いという傾向がわかってきました。最近の研究ではライフスタイルと卵巣がんの関連性について研究が進められているそうです。
卵巣がんの自覚症状は、お腹が張ったような感じがするとか、おしっこが近いとか、下腹の部分に、しこりのようなものがある気がするといったようなあまり痛みを伴わない症状が多いといわれています。このため卵巣がんは、自覚症状がわかりにくいことから、卵巣がんであることがわからないまま、病院に来て検査を受ける方が多いそうです。
最近多いのは、子宮内膜症から卵巣がんに進行してしまうというケースも増えているようなので、痛みが無くても、体に少しでも異変を感じたら、そのまま放っておくのではなく、早めに病院に行くほうがいいかもしれません。良性の腫瘍ならいいですが、卵巣がんに進行して悪性の腫瘍になってしまうと死亡率が上がってしまいます。
早めにキチンと検診を受ける
卵巣に出来る悪性腫瘍のことを卵巣がんといい、近年少しずつですが、発生確率が増えてきているといわれています。卵巣がんというのは、女性特有の病気です。初期症状は自覚症状が無い場合が多く、お腹が張ったような感じや、下腹のしこり、頻尿などといったような痛みを伴わない症状が多いとのことです。卵巣がんで腹水がたまった状態になると、転移していたり、末期のがんになっていることもあります。そうなると、専門医がいる病院で検査しなければなりません。卵巣というのは、親指くらいの大きさの臓器です。女性の体の左右に一つずつあります。卵巣がんの検査の方法は、腫瘍マーカーなどの科学的な検査方法や超音波検査、病理学的な細胞を採取して行う検査など色々あります。卵巣がんの治療の方法は、抗がん剤を使用したり、化学療法を行ったり、進行が進んでいる場合は、卵巣の摘出手術を行うこともあります。
末期のガンでないかぎりは外科的手術をしなくても、漢方を使った漢方療法や、免疫療法などが行われているようです。
子宮にはその左右に卵巣という臓器がついており、これらに発生するがんを卵巣がんと言います。卵巣がんはある程度腫大するとか腹水が貯留するなどがんが蔓延してから、初めて自覚的な症状がでるため早期診断しにくいがんであり、当院の症例でも半数以上が進行がんで診断されている悪性腫瘍です。また卵巣がんと良性の卵巣腫瘍との鑑別は難しく、手術で摘出?検査してから初めてがんと診断される場合も多くあります。
このように卵巣がんの診断や治療は難しく、取り上げるべき問題点は数多くあるのですが、卵巣腫瘍の診断の方法や発想を理解して頂くために、1. 卵巣がんの分類、2. 良性腫瘍との鑑別が難しい、について下の「II. 卵巣がんの問題点」で取り上げます。ここでは主に卵巣がんの一般的な診断?治療について述べます。
初期症状
腹部膨満感肥満妊娠等、理由がないのにお腹が膨れてきた場合
腹部腫瘤自覚自分で触って下腹部にしこりが触れる場合
検診異常 検診で下腹部に腫瘍があるとか卵巣が腫れているといわれた場合
診断の為の検査 画像診断
超音波?CT?MRI等の画像診断で腫瘍の大きさや内容の性状を検査します。また腹水や胸水の貯留の有無や明らかな転移病巣の有無等、がんの進行の程度を調べます。1cm以下の小さながんは解らない場合があります。検査をしてから1週間以内には結果がわかります。
腫瘍マーカー
卵巣が腫大した状態?卵巣腫瘍を良性の腫瘍か悪性のものか区別する際に、有用な血液検査として腫瘍マーカーがあります。CA125?CA19-9等が主な腫瘍マーカーで、これらが異常な高値を示す場合には悪性の可能性が高いとされています。治療前に高値を示した腫瘍マーカーは治療中?治療後に繰り返し検査して、治療効果の判定や経過観察に利用します。検査してから1-2週間くらいで結果がわかります。
細胞検査?組織検査
腹水や胸水が溜まっている場合には、これらを一部採取してがん細胞の有無を調べます。がん細胞があれば確実にがんと診断されます。また膣内?腹部?鼠径部など採取しやすい場所に転移病巣がみられる場合にはこれを一部採取し組織検査する場合があります。
治療手術
卵巣がんの手術は治療目的の腫瘍摘出と同時に、がんの進行期を診断する目的でも行います。手術前に卵巣がんとわかっている場合や手術中に卵巣がんと診断された場合には、子宮+両側附属器(卵巣?卵管)+大網?骨盤内~傍大動脈リンパ節+虫垂等を摘出するのが標準手術とされており、これに加え進行期確認の目的で腹腔内のがん細胞の有無を検査するため腹水細胞診も行います。また肉眼的に見てがんの転移と思われる部分も出来る限り摘出します。これらの摘出したものを十分に検査し、最終的ながんの進行期や組織型を診断し、手術後の追加治療を検討します。がんが明らかに広がっていて全部摘出できない場合には、手術を縮小して抗がん剤治療を行う場合もあります。
化学療法
卵巣がんは比較的化学療法が有効ながんで、その治療には多くの抗がん剤が使用されています。中でもシスプラチン?カルボプラチンと呼ばれる白金製剤は特に有効であり、現在では卵巣がん治療の中心となっています。またタキソールやタキソテールと呼ばれるタキサン系薬剤も有効であり、現在は白金製剤とタキサン系薬剤とを併用するのが、卵巣がんに対する第一選択化学療法の世界標準とされています。主な副作用としては吐き気?嘔吐、脱毛、手足のしびれ、白血球や血小板減少があります。これらの副作用が強い場合には化学療法を変更したり中止したりすることがあります。
卵巣がんは組織型という顕微鏡による検査で分類するのですが、卵巣は様々な組織が混在する臓器であるため、そこに発生する卵巣がんは膨大な種類に分類されています。その発生母地から上皮性卵巣がん、性索間質性卵巣がん、胚細胞性卵巣がんの3つに分け、それから組織学的に細かく分類するのが一般的ですが、ここでは卵巣がんの組織型分類と化学療法に対する感受性について述べます。
卵巣がんはその発生母地から上皮性?性索間質性?胚細胞性の3つに分類するのですが、1991-2000年の間の当院治療症例の頻度をみると上皮性が93.8%、性索間質性が1.4%、胚細胞性は3.8%でした。また上皮性の中でも漿液性が39.4%、粘液性が13.4%、類内膜型が23.3%、明細胞性が11.6%でした。つまり卵巣がんの組織型の内訳は上皮性が大半を占め、さらに全体の80%以上が漿液性?粘液性?類内膜型?明細胞性の4大組織型ということになります。
卵巣がん治療の中心は手術と化学療法ですが、化学療法で中心となる抗がん剤は白金製剤です。卵巣がんは組織型によりこの白金製剤に対する感受性が異なり、漿液性?類内膜型?胚細胞性等の高感受性の組織型と、粘液性?明細胞性等の低感受性の組織型に分類することができます。このように卵巣がん治療において、組織型は大変重要な意味を持ちます。また卵巣がんのその他の組織型の抗がん剤の選択等、詳細は担当医にお尋ね頂けましたら幸いです。
良性腫瘍との鑑別が難しい
当院には他の病院で「卵巣腫瘍」とか、「卵巣の疑いがある」と言われた患者さんがよく相談にみえます。皆さん「手術しないでがんの診断はできないのか」とか、「腫瘍マーカーは正常なのになぜ手術が必要なのか」とか言われますが、超音波検査等画像診断や腫瘍マーカー検査の結果がなければ何も解りませんし説明もできません。ここでは1)なぜ良性の卵巣腫瘍と卵巣がんは手術しないと鑑別できないのか、2)画像診断や腫瘍マーカーの考え方、3)卵巣腫瘍の治療方針、について述べます。
なぜ良性の卵巣腫瘍と卵巣がんは手術しないと鑑別できないのか
画像診断で明らかに転移がある場合は別ですが、悪性腫瘍の診断は原則的に病理組織学的に行われます。このため手術前にがんの診断をするには、腫瘍の一部を採取し病理組織検査を行わなければなりません。例えば胃がんや大腸がんなら内視鏡でがんの部位から組織を採取できます。例えば子宮頚がんなら膣からがんが確認できるため容易に組織が採取できます。では卵巣がんは組織採取ができるのでしょうか?
卵巣は腹腔内に小腸や大腸、子宮等と共にあります。膣から直接針を刺して、または腫瘍が大きい場合には腹部から針を刺して組織を採取することは不可能ではありません。しかし、悪性腫瘍であった場合には針を刺したことでがん細胞が腹腔内に蔓延することになります。
前述の様に、がん細胞が腹腔内に蔓延していることは卵巣がんの進行期にも用いられており予後を左右しかねない因子です。針を刺したことでがんが進行する可能性を考えれば、このような検査が一般に行われていないことが御理解頂けると思います。
画像診断や腫瘍マーカーの考え方
卵巣腫瘍と卵巣がんは原則的に手術で腫瘍全部を摘出し、病理組織検査により鑑別します。しかし実際には手術前に「卵巣がんの疑いがある」とか「良性卵巣腫瘍の可能性が高い」と説明されます。これは主にCT?MRI?超音波検査等の画像診断や、CA125やCA19-9等の腫瘍マーカー検査により予想されています。
良性卵巣腫瘍の場合は腫瘍の内容が水?粘液?血液?脂肪等で一様の場合が多いに対し、卵巣がんの場合には水?粘液?血液の成分の他に充実部と呼ばれる部位が認められる場合が多くあります。これは良性腫瘍の場合には腫瘍細胞自体は増殖しませんが、これらが産生する水?粘液?脂肪等が腫瘍内に貯留するため腫瘍自体が増大するのに対し、がんの場合には産生する水?粘液?血液等が腫瘍内に貯留すると同時に、腫瘍細胞自体が増殖するため腫瘍が増大します。充実部はこの腫瘍細胞自体の増殖により形成されると考えられ、画像診断ではこの充実部の有無を検索することにより、良性の卵巣腫瘍か卵巣がんかを予想します。
腫瘍マーカーは、がん特異抗原と呼ばれるがん細胞から放出されていると言われている物質の血清内(血液内)濃度を測定しています。臨床において悪性疾患の病勢を反映することが多いため、多くの悪性腫瘍に様々な腫瘍マーカーが用いられていますが、腫瘍マーカー各々によって測定する物質が異なるため正常値や安定性が異なります。卵巣がんで主に用いられている腫瘍マーカーはCA125やCA19-9と呼ばれるもので、卵巣がんの病勢をよく反映し、また血液検査で簡便なため広く用いられています。
良性の卵巣腫瘍と卵巣がんとを鑑別する際に、というより卵巣腫瘍を認めた場合には必ず腫瘍マーカーは検査します。正常値であれば良性の卵巣腫瘍の可能性が高く、高値であれば卵巣がんの可能性が高いと判定するのですが、良性腫瘍でも腫瘍マーカーが上昇場合もあり、また月経周期や腹痛等の症状によって変動する等、値が不安定で1回の検査では確定できない場合もあります。
卵巣腫瘍の治療方針
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以上の様に手術前に良性の卵巣腫瘍と卵巣がんとを鑑別するのは非常に難しいのです。このため卵巣がんの可能性がありますが経過観察しましょう」とか、「良性の卵巣腫瘍の可能性
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が高いですが手術しましょう」、というよく解らない説明をせざるをえない場合があります。では説明を受ける患者さん側としては、どう考えれば良いのでしょうか?
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私達が手術を勧めるのは、1)卵巣がんの可能性がある、2)腫瘍が大きい、または今後大きくなることが予想される、3)腹痛?生理痛(月経困難症)等の症状や不妊症等他の病気の原
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因になる、場合だと思います。手術を勧められた場合には、どの項目にあてはまるのか担当医に確認するのが良いと思います。
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経過観察をすすめる場合は、1)良性の可能性が高く症状もない場合、2)自然に消失する可能性がある場合です。画像診断でも腫瘍マーカーでも悪性を示唆する所見がなく、症状もな
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ければ早急に治療する必要がなく、経過観察を勧められます。また卵巣は卵胞で卵を育てて排卵してと性周期により形態が変化します。一時的に卵巣腫瘍を認めても自然に消失する場
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合も多く、「手術をしたけど腫瘍はなかった」では話になりません。
以上、良性の卵巣腫瘍と卵巣がんとの鑑別について簡単に述べました。手術するか経過観察
白血病画像/b
するかの判断は、やはり診察をして検査を把握していなければ適確な判断ができないため、疑問があれば検査結果や診断根拠について、直接担当医に質問されるのがよいと考えます。
2008年10月14日星期二
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